ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

小澤征爾さんと、音楽について話をする・小澤征爾×村上春樹

2012-01-20 12:11:06 | Book
小澤征爾さん復活!気迫のタクトに喝采


これは対談集である。とても楽しく読みました。このご本を貸して下さった方に感謝いたします。
どうやら音楽の知識範囲という点においては村上春樹は小澤征爾よりも一枚上手のようです(^^)。

そしてこのお2人を最初に会わせたのは、小澤征爾のお嬢様「小澤征良」と村上春樹の奥様とが友人であったことから。
大腸癌の手術のあとで、時間のゆとりのあった小澤征爾の京都の音楽塾への村上春樹の訪問からはじまり、
次には村上家への小澤親子の訪問。
村上の書斎での、小澤との音楽談義がその出発点となったようです。
村上が持っていたレコードやCDの量のすごさと、その演奏や指揮の在り様に対する耳の繊細な感応度などなど驚くほどだ。
そうした交流のなかで自然にこの対談という流れに……。
そして、小澤征良のお薦め通りの1冊の対談本が出来上がる。それほどに音楽のお話は尽きることがなかったということ。
さらに、読み手までを楽しく巻き込んでしまうほどに楽しい1冊となった。

この本の企画&構成は村上春樹である。
小澤征爾の体調は決してよいものではなかった。対談の途中では、こまめに水分と食べ物の補給が欠かせない。
しかし、今までの過密スケジュールから一旦遠ざかり、こうした楽しく充実した時間が持てたことは幸いでもある。
それは、今までまとめて文字化されることのなかった、小澤征爾の天衣無縫な天才の音楽活動の魅力を引き出せるだけの
知識と耳を村上春樹が持っていたことによるものが多い。

そうして、村上は小澤のひた走った指揮者としての過去の日々の思い出を改めて引きだしたとも言えるだろう。
小澤征爾1人ではできなかったことだったかもしれない。
こうしたお2人の音楽と語りのハーモニーは心地よく読者を魅了する。

カラヤンやバーンスタイン、その他の指揮者としての姿勢、あるいは小澤征爾に託したもの。
それを書いていけばきりがない。
この本のおかげで、近所の図書館の小沢征爾のCDがほとんど借り出されてしまっているという現象まで起きているそうです。


この本からの引用はきりがないほどあるので、別の本から思いだしたことをここで引用します。大江健三郎の言葉です。

『いま、小澤さんは、大きく達成した、揺るがない巨匠だ。そして若い人たちに伝えるべきことを切実に考え、
 それを伝えるシステムを実現している。そして指揮台に立てば、あいかわらず若わかしく、
 新しさは、成熟のきわみの新しさだ。』(同じ年に生まれて・小澤征爾*大江健三郎・2001年・中央公論新社刊より。)


(2011年11月30日・新潮社刊)