はじめ
子午線の上に旗が立つ
五月
五月
愛を待つ
光る鳩
キリキリ舞いするキリスト
白い波止場に波が立つ
夢が泡立つ
風が立つ
ふかくえぐれた波の跡
まぶしい羽音
散る鳩
裸のマストに蜘蛛の巣
そして孤独なママゴト
五月
五月
愛を待つ
おわり
首をかしげた港町
クレーンまわり
ひまわりまわり
まわりおえて枯れてしまい
丘は火葬場のけむり
海辺は工場のけむり
まじりあって消えてしまい
………
遁走する船にむかって
屋上の子供たちは手旗信号
いっせいにサイレン鳴り
いちめんにコスモス揺れ
幾千の眼がしばたたき
そしてしずかに
海は坂からずり落ちる
(詩集「薔薇宇宙」・1964年)より
詩のなかに「季節」が欲しいと切実に思うようになった。
間もなく夏の日々がやってくる。「愛を待つ」季節なのだろうか?
夏のおわりには、「海は坂からずり落ちる」のだろうか?
陽はおちてゆきながら
異国の空に朝を届けにゆく
円形の時間は几帳面に
アポロンの馬車の轍を描き続ける
短夜の闇にうなだれて
ひまわりが疲れた花首をさすっている夢をみた