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《浜田知明作・風景》
豪雨のなか
若い兵士の亡骸はすでに大地に溶け合おうとしていた
しかし古びた軍靴は歩き出そうとしていた
どこへ?祖国へ
何故自分はここにいるのか
亡骸はつぶやく
お前はどこへ行くのか
海を渡る、と軍靴がつぶやく
若い兵士は
どの地で産声をあげたのだろうか
そこからどこへ?何度?移動したのか?
海を渡ったのか
どの母親から生まれたのか
父親は誰か
記憶は抹消され
物語はすべて一律化させられた
それぞれの一つの死が
山積し 散乱する
大地はすべてを抱きよせることができるだろうか
深い怒りは死とともに眠ったか
いや 疲れた軍靴は尚も歩こうとしているのだ
雨音が遠ざかってゆく
やがて空の青を映して
海の青が深まるとき
虹の足が降りてくる
* * *
ささやかな献詩です。