
以前に読みました同名の小説は「ちくま少年文庫」だったために、削除された部分がかなりありましたので、「中公文庫」で読み直しました。(これは大丈夫かしら?)
子供に読ませたくない部分は大方わかりましたが、そこを削除してしまったら、本当のことは隠されるわけですが、それでいいのかな?と思います。藤原ていさんの二人の息子さんはこの現実を幼い目と心でお母さんと共に見たわけですから……。末っ子の赤ちゃんは記憶にはないでしょうが、四人の母子共々死の寸前まで生き抜いて誰も死ななかった、という奇跡なのですから。
人間が極限状態におかれた場合、想像以上の生きる力が生まれる人間がいること、反面では、どこまでも卑怯な生き方を選ぶ人間がいること、がよくわかります。当然、藤原ていさんのご家族は前者です。
満洲からの引揚には、様々なコースや、引揚のやり方があったのではないか?と思いますが、藤原ていさんと三人のお子さんの引揚の様子を拝読しますと、相当の悪条件のもとで、実行されたと思われます。敗戦直後の満州においては、ほとんどの連絡手段も持たず、情報入手も難しいものでしたから、仕方がないとは思いますが、本当にご苦労なさったことと思います。皆さんが最後まで生き抜いて下さり、このような記録を残された藤原ていさんに改めて、頭を垂れます。そして抑留生活を余儀なくされたご主人様の新田次郎氏の無事帰還も果たされたことも含めて。
おそらく、皆様がこれほどのご苦労をなさったのは、ご主人様のお仕事「観象台…今で言えば気象庁」が、軍に関わる部署だったからではないか、と推測致します。だからこそ早く新京から逃げなければならなかったのではないでしょうか?
その後にご夫婦共々に、多くの著作を残されたことも喜びたいと存じます。
(2013年4月5日 改版17刷 中央公論新社刊 中公文庫)