かつての戦時下に生まれたが、筆者は記憶にないあの時代を記した母親のノートから、
その満州での足跡を辿る。こうして「敗戦国」の困難な時代の波を生き抜いた家族を確認する。
筆者はその時4歳。その弟は新京から葫蘆島に辿り着く前に亡くなった。
父親は別の困難(ソ連抑留)のなかにいた。
そして語り継ぐ。それが人間の本当の歴史となるのだ。
藤原てい氏の自伝小説「流れる星は生きている」もその一冊だろう。
「新京」から「葫蘆島」への困難な移動は、多分同じだったろう。
我が家族も、敗戦から一年後に同じコースを辿っているが、その時期には
「引揚団」という組織的な動きが具体化された時期に入っていたようだ。
ほとんど、海路はアメリカのお世話になったようだが……。
私が「戦争」をテーマに書いた詩を合評会に提出した時、「またか……」と
言われたことがある。
私は沈黙した。仲間も沈黙した。こうした状況はどこにでもある。
それでも、託された者は書き続け、語り続けるのだ。
梓陽子さんの母上が残されたノートは、どんな歴史書よりも尊い。
そして、偽りのない歴史証言となるのだ。
このご本を送って下さった友人K・Aさんに深く深く感謝いたします。
2021年4月16日(九条の会中原区連絡会発行)