ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

東京日記 リチャード・ブローディガン詩集 福間健二訳

2021-05-11 18:57:26 | Poem

 

退屈な東京の夜にホテルですること

Things to Do on a Boring Tokyo

Night in a Hotel

 

1 ひとりで夕食をとるんだ

  いつだってそれはおもしろい

 

2 あてもなくホテルの中を歩きまわるんだ

  大きなホテルだからね、あてもなく

  歩きまわる空間がたっぷりあるわけだ

 

3 エレベーターであがったりおりたりするんだ

    まったく理由もなしに

 あがってゆく人は自分の部屋に行く

    ぼくは行かない

おりてゆく人は外に出かける

   ぼくは出かけない

 

4 ぼくはホテルの内線電話でぼくの3003号室に

  電話して長いあいだ馴らしっぱなしにして

  おこうかと本気で考える それからぼくはどういう

  場面にいていつ戻ってくるのかなと思う 戻ったら

  ぼくに電話してくれるようにというメッセージを

     受付においてくるべきだろうか?

 

      東京 一九七六年六月六日

 

## 孤独だったのか?いたずらっ子だったのか?

 

朝日ののぼる国------サヨナラ

Land of the Rising Sun

 

ぼくたちは日本の夜から飛んできた

東京の羽田空港を

四時間前、六月三十日午後九時三十分に

   飛びたち

そしていま太平洋の上

日本へむかう途中の朝日の中に

   跳びこんでゆく

日本ではまだ暗やみがよこたわり

太陽がやってくるまで数時間かかる

ぼくは日本の友人たちのために

七月一日の朝日にあいさつする

かれらが愉快な日を迎えるように

太陽は日本へと

   むかっている途中だ 

 

ふたたび六月三十日だ

太平洋上の

日付変更線をよこぎって

故郷アメリカにむかっている

こころの一部は日本に

おいたまま

 

## 彼は、不思議の時間を通過した?

ブローディガンの優しさが日付変更線を通過してゆく。

太陽とすれ違い、交差しながら。

私は、思わず地球儀を頭のなかで回転させてみた(笑。)

 

福間健二さんの翻訳が素晴らしく、とても楽しかったです。

 

   (1992年9月1日初版  1999年6月1日第二刷 思潮社刊)