退屈な東京の夜にホテルですること
Things to Do on a Boring Tokyo
Night in a Hotel
1 ひとりで夕食をとるんだ
いつだってそれはおもしろい
2 あてもなくホテルの中を歩きまわるんだ
大きなホテルだからね、あてもなく
歩きまわる空間がたっぷりあるわけだ
3 エレベーターであがったりおりたりするんだ
まったく理由もなしに
あがってゆく人は自分の部屋に行く
ぼくは行かない
おりてゆく人は外に出かける
ぼくは出かけない
4 ぼくはホテルの内線電話でぼくの3003号室に
電話して長いあいだ馴らしっぱなしにして
おこうかと本気で考える それからぼくはどういう
場面にいていつ戻ってくるのかなと思う 戻ったら
ぼくに電話してくれるようにというメッセージを
受付においてくるべきだろうか?
東京 一九七六年六月六日
## 孤独だったのか?いたずらっ子だったのか?
朝日ののぼる国------サヨナラ
Land of the Rising Sun
ぼくたちは日本の夜から飛んできた
東京の羽田空港を
四時間前、六月三十日午後九時三十分に
飛びたち
そしていま太平洋の上
日本へむかう途中の朝日の中に
跳びこんでゆく
日本ではまだ暗やみがよこたわり
太陽がやってくるまで数時間かかる
ぼくは日本の友人たちのために
七月一日の朝日にあいさつする
かれらが愉快な日を迎えるように
太陽は日本へと
むかっている途中だ
ふたたび六月三十日だ
太平洋上の
日付変更線をよこぎって
故郷アメリカにむかっている
こころの一部は日本に
おいたまま
## 彼は、不思議の時間を通過した?
ブローディガンの優しさが日付変更線を通過してゆく。
太陽とすれ違い、交差しながら。
私は、思わず地球儀を頭のなかで回転させてみた(笑。)
福間健二さんの翻訳が素晴らしく、とても楽しかったです。
(1992年9月1日初版 1999年6月1日第二刷 思潮社刊)