11
わたの原八十島かけてこぎ出でぬと
人には告げよ海人(あま)のつりふね (参議 篁・ 八〇二~八五二)
「八十」とは数が多いこと。沢山の島を巡って流されてゆく身を、
海人たちよ、都に残された人に伝えてほしい。残酷な時代だなあ。
12
天つ風雲のかよひ路吹きとぢよ
乙女の姿しばしとどめぬ ( 僧正遍昭 ・そうじょうへんじょう・八一六~八九〇)
舞姫たちの美しい姿をもっと見ていたいから、雲を引き寄せて
天の通り道を塞いでおくれ。
13
筑波嶺の峰より落つるみなの川
恋ぞつもりて淵となりぬる (陽成院・八六八~九四九)
筑波の峰は「男体」「女体」という二つの峰から、滴る水が合流して「皆野川」になると言う。あなたへの思いも、そのように深い淵となってしまいました。