ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

贈答のうた  竹西寛子

2009-11-21 01:47:41 | Book

 この本は5年ほど前に購入したものですが、以下の文章はこの著書の「はじめに」のなかから抜粋しました。大変に魅力的な導入の言葉です。ぽちぽちと読んで楽しんでいます。しかし大切な本になるであろうというたしかな予感があります。

  *    *    *

 『物や事に感じて平静を乱された時に、その心の揺れをととのえようとする手立ては人次第であろう。何によって惹き起こされた心の揺れか、その原因と、人それぞれの性情や素養との関係によって、手立てのあらわし方もおのずから定まってゆく。もし仮りに言葉を頼むとすれば、言葉は原因との折り合いをつけようとする働きの中に、誰かに向って、あるいは何かに向って訴えようとする働きも兼ねることになろう。
 人は又その心の揺れを、沈黙に封じ込め得る存在である。けれども私がこれから付き合ってゆこうとしているのは、沈黙を守り通せなかった人々であって、頼られている言葉は詩歌、すなわち「うた」が中心である。』


  『うたはあのようにも詠まれてきた。』


  『人はあのようにも心を用いて生きてきた。』


  *    *    *


 取りあげられたものは「勅撰和歌集」「伊勢物語」「蜻蛉日記」「和泉式部集」「和泉式部日記」「源氏物語」「建礼門院右京大夫集」「長秋詠藻」長秋草」「拾遺愚草」などに見られる「相聞」「問答」の歌を集めたものです。たとえば「伊勢物語」では、このような歌のやりとりがあります。

梓弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるわしみせよ   男

梓弓ひけどひかねど昔より心は君によりにしものを     女


(講談社刊・2002年第一刷、2004年第二刷)

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
竹西寛子さん (タクランケ)
2009-11-21 12:31:56
竹西寛子さんは、文章が素晴らしい。わたしはファンです。といっても、ほとんど読んでいないので、読者としては落第ですが。雑誌や新聞に掲載されている随筆、エッセイを読んで、その文章の品のよさに惹かれたのだと思います。
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品性 (Aki)
2009-11-21 14:59:07
タクランケさんのおっしゃる通りですね。

「頼られている言葉は詩歌・・・」

「人はあのようにも心を用いて生きてきた。」

こんな言葉に出会いますと、大袈裟ではなく、心が震えるような感覚になります。言葉も心ももっともっと大切にと思います。
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いやはや・・・ (リベル)
2009-11-24 04:36:08
恐れ入りました。竹西寛子さんを全く知りませんでした、いけませんね。

「良い」というのか「良質な」文章というのか、たちまち虜になりました。少しアプローチしてみます。有り難う御座いました、良い人を教えて頂きました・・・^^;
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こんにちは。 (Aki)
2009-11-24 13:55:15
リベルさん、お久しぶりです。これはお薦めの本です。きっとお気にいりになりますよ(^^)。

これを買った頃には、詩で「相聞」ができないものか?と思ってその参考資料として購入いたしました。

でもこれには気の合う相手が1人必要ですので、なかなか実現しません。「連詩」は何度か楽しんだのですが・・・・・・。
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