エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

イオンとクレウサの対話

2014-01-30 06:44:35 | フーコーのパレーシア

 

 イオンは、アポロ神は願に応えないといいます。なぜなんでしょう?

 

 

 

 

 

     イオン : アポロは、秘密にしておくべきだと考えていることを明かすことができるでしょうか?

     クレウサ : アポロの至聖所は、願掛けするすべてのギリシャ人に開かれているはずよ。

     イオン : そうではありません。アポロの栄誉は関係ありません。あなたはアポロの思いを大事にしなくちゃいけません。

     クレウサ : アポロの思いの何が犠牲になるというのですか? このことと彼女(クレウサの女友達)と何の関係がありますか?

     イオン : この願をあなたに問える人は誰もおりません。アポロが粗相をするのが、まさにアポロ自身の神殿であることがハッキリすれば、あなたの願掛けに応えた人を苦しめることになるでしょう。ご婦人。諦めてください。私どもは、アポロを、アポロの裁判所に訴えてはならないのです。ことを明かしたくない神やら、犠牲の印を与えたくない神やら、驚いている鳥やらに、強要するようなことがあれば、私どもは馬鹿なだけです。神々に逆らって求める目標は、それを手に入れても、いいことはありません。

 

 

 

 

 

 アポロは沈黙するだろうというイオンは、きわめて率直なことがわかります。ものを言う時に、権力や金や色や名誉心をちらつかせて強いるのは、約束違反なのですね。

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“本物”の見つけ方 : 少しくらい過度に調べる拡充法

2014-01-30 02:46:17 | エリクソンの発達臨床心理

 

 データがあいまいなのに、そこに筋が見つかるのは、繰り返されるパターンがあるからなのです。そのパターンは通常、見逃されるか、否定されることが多いのです。代表的なものの一つが、自閉症児達の「常同行動」と呼ばれるものですね。「常道行動」という言葉そのものが、すでに「障害だから、ショウガナイ。」「なくそう」という響きが感じられるでしょう?

 

 

 

 

 

 しかし、私どもが理解しなくてはならないのは、このような仕事においては、ケチの掟が役に立つのは、歴史的な資料にぴったりフィットするときだけ、ということです。この歴史資料にぴったり合うことは、フロイトが「重複決定」という概念でくくっています。いかなる歴史的・人格形成の用語でも、ずっと多くの側面や傾向によって決まってくるのが常で、そのいずれもがお互いに響きあうものですから、控えめな説明では遠く及ばないものなのです。あらゆる妥当性を、少々過度なくらいに探っていくのが、いろんな事実がお互いに影響しあったり、排除しあったりする法則に、なんとなく気付く唯一の道であることが多いのです。

 

 

 

 

 

 ここも、本当に臨床的な場所ですね。さすがエリクソンです。射程を広めにとって、繰り返されるパターンを見つけるのです。そのパターンは「常道行動」につきものの否定形の見方とは真逆でして、肯定的な視点で見ると、“本物” に近づけますね。

 あなたも実際におやりになることです。そうすると「あっ、これだ」と解りますよ。

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