被災地で流行るもの。そう言われて、何を想像するでしょうか? 地震、津波、原発事故に伴う放射能汚染。そして、それらの影響? まっ、確かにダンプは多い。道路工事も目に付く。しかし、それは、オリンピックの準備をしている外苑や有明だって、同じでしょ。工事をしてりゃぁ、日本全国そんなもの。特別、流行ってる訳じゃぁない。
被災地と言って、何か特別なことがあるはずだ。心理支援の人もそう考えるはずですね。一番代表的なのは、PTSD、心的外傷後ストレス症候群、と呼ばれるもの。フラッシュバックと言って、意識でコントロールができないレベルで、不意に怖い場面を思い出したりすることがあります。私も1ケースだけ、そういうケースがありましたっけ。その人は、学校の管理職で、津波に襲われた学校の人でした。でも、それは直接津波が怖かった、と言うよりも、津波に流されて、「助けて~」、「助けてくれ~」と叫びながら、川を流された人を何人も助けられずに、「見捨ててしまった」ということが罪責感となっていたからでしたね。今「1ケース」と申しましたでしょ。私は被災地での心理支援が4年目なんですね。大体95ケースを担当してんですけれど、PTSDはたった1ケース。ですから、被災地のイメージからくる心理的被害は、現実には例外的存在です。
被災地の現実は、実際はどうなのか?
それは、現実には、ケースの9割以上が「愛着障害」のケースです。それは今どきの日本では、標準でしょう。津波が来なかった東京や、横浜、大阪や、鳥取、熊本でも、新潟でも、「愛着障害」だらけ。先日同窓会で久しぶりに会った、もともと障害児福祉の先生も、日本全国どこに行っても「愛着障害」の話をしているとのこと。そりゃそうですね。「私も毎日、愛着障害の話をして、愛着障害児のセラピーをしてます」と話が合いましたね。
神戸で研究してた研究者の人も、来ていますが、その辺の事情が全くお判りでない。研究者になって、一定程度の社会的ポジションを得てると思ってるからかもしれません。まともな臨床をしてないからだと思います。いくら私が「愛着障害が…」と言っても、ピーンときた、という感じが皆無ですからね。臨床をやってるはずがありませんね。
まあ、そんな状況ですからね。被災地だからと言って、特別ではないんですね。大地震や津波は、視覚的にインパクトがありましたから、その影響を過大視してんですね。でもね、今の日本は、一発の大地震、一発の大津波よりも、日常生活の方が、はるかに、デカくて、はるかに深刻な、非人間的な世界なんです。ですから、それは、被災地でないところと同じです。非正規の仕事が増えれば、被災地でもそう。離婚が増えれば、被災地でもそう。自殺が増えれば、被災地でもそう。特別じゃあない。
被災地で一番流行るもの。それは「愛着障害」はじめ、日本で残念ながら流行っていることが、そっくりそのままなんですね。
そして、それは、今の日本の日常が、「大」が付く地震や津波に比べても、はるかに残酷で、はるかに陰惨で、はるかに人間破壊なものだ、ということです。
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