エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

ユングが教えてくれる、「無力な個人にできること」

2015-08-07 06:23:12 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
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 戦争を反省する季節、戦争法案の時期。太平洋戦争を起こした無責任な政治家、官僚は、そのままで今の日本にも、厳然として生きています。1つは日本はタコツボ社会で、自分の組織、同じ職種以外の人と話をしませんでしょ。それに、組織の中の話し合いは軽視され、形骸化しがちで、大事な話は廊下や飲み屋でやる感じでしょ。丸山眞男教授の70年前の鋭い洞察が生かしきれない。公の、したがって、議事録が残る形での、話し合いで物事を決めることが習慣になってないからですし、ノーベル賞の益川敏英教授が学生の頃に参加してた、名古屋大学のE研のような≪対等な対話≫をすることを習慣としていないからですね。

 丸山眞男教授とは、別の視点から、日本人と日本の組織の在り方を分析したのが、加藤周一さんですね。加藤周一さんは、「システムの力が大きくなるにつれて、ますます個人の力が弱くなって、今やほとんど0です」と言いますね。それは何も日本に限られた現象ではありません。組織の官僚制化が進んで、今や硬直化してますでしょ。個人は無力と感じやすい。

 それに対して、ユングは何と言っているのか? ユングの第4夜。今晩は、主として、ユング著作集第10巻(The collected Works of C.G.Jung, Vol.10, p245-305)にある、「発見されてない『本当の自分』」(現在と未来)から。平凡社から『現在と未来』(松代洋一、編訳)と題して、翻訳が出ています。

 ユングは言います。

「個人の意見はもみ消され、個人の道徳的な判断は、容赦なく抑えつけられてしまいます。しかも、『目的が手段を正当化する』と言う口実でそうされるわけですね。」(前掲書、p259)と。

さらにユングは続けます。

「国の政策が、個人的信条にまで高められますし、指導者や政党のドンが、良きにつけ悪しきにつけ、神様になってしまいます」と。

 アベシンちゃんと悪魔の仲間たちのことだけを言ってる訳じゃないみたいですね。

 では、そんな個人をぶち壊す組織、集団に対して、私どもはどうすれば、自分を殺さないで生きていくことができるのでしょうか? ユングに教えてもらいましょうよ。ユングはそれを短い文書にして、イタリック体で書いてますよ。ここでは太字にしますね。

組織化された集団に効果的に抵抗できるのは、その集団そのものと同様に≪その人ならではの持ち味≫を上手にまとめ上げた(組織化した)人だけです」(前掲書、p278)ってね。

 ですから、内省、内観して、自分の内なる声≪天の声≫に忠実に従うことが、いまこそますます大切ですね。それを生涯発達の視点でまとめたエリクソンのライフサイクル論が大事になるのは、まさにこの点です。

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