ロバートは、悪いことをどんどんする大人になっちゃうのかな?ロバートの積み木にはいろんな見方ができることが分かりました。特に、ロバートが自分を投影したと考えられる人形が、塔の天辺に仰向けに置かれているところを、エリクソンがどのように解...
「やる気」、というのは、日本の学校教育でも、家庭教育でも、大事にされていますよね。エリクソンはこの「やる気」を、発達段階の三番目、幼児後期、だいたい、幼稚園に通う頃、3歳から5歳くらいまでの発達課題としました。「自主性」「自発性」と翻訳されることが多いこの「やる気」のもとの英語は、エリクソンによれば、≪a sense of initiative イニシアティブという感じ≫です。このイニシアティブについて、少し考えてみたいと思います。
このイニシアティブと親戚なのが、皆さんのお名前のイニシャル 頭文字でしたり、儀式のことを、イニシエーションと呼んだりすることがあるかもしれませんが、このイニシャルやイニシエーションや、その動詞、イニシエートなどがあります。このイニシエート initiateは、1)始める、2)加入させる、3)初歩を教える、伝授する、などの意味がありますし、イニシャルも、頭文字の意味がありますように、イニシアティブも、「何か物事を始める」こと、「最初」と関係があります。
a sense of initiative イニシアティブは、何かを始める感じ、ということになりますから、こなれた日本語、日常会話では、≪やる気≫ということになるでしょう。幼稚園くらいの子どもが、このイニシアティブ、≪自分から何かを始めてもいい感じ≫を身に着けていることになります。
3番目の発達段階の課題ですから、最初の発達課題である信頼、≪根源的信頼感 a sense of basic trust≫と、2番目の発達課題である 自律、≪自分の感じでやっていい感じ a sense of autonomy≫をすでに身に着けていることが前提になります。発達はまるで積み木ですね。
≪根源的信頼感≫は、赤ちゃんがお母さんから、毎日毎日、時間時間、1分1分ごとに、赤ちゃんが必要とするときに、繰り返しおっぱいをもらい、繰り返しオシメを変えてもらい、繰り返し「かわいいわね」などと声をかけられたり、赤ちゃんの可愛さに繰り返し目を細めるなどしてもらうことを通して、1)お母さん(他者)は当てになる、言葉にならない感じと、2)それだけの世話を繰り返ししてもらえる自分は、宝物、値打ちものに違いないという、これまたことばにならない感じ を組み合われたものです。
その根源的信頼感の上に、幼児前期、お話をするようになり、よちよち歩きをする一歳半から、三歳くらいまでの時期に、自分の感じでやっていい感じ ≪a sense of aitonomy オートノミーの感じ≫を身に着けることができます。オートノミーは、「自分」を表すオート と、「法則」を示すノミー>ノモスからできています。すなわち、自分で感じていることを「法則」として使って、「自分は生きて、考え動いて大丈夫という感じ」、「自分のことは自分で[自分の感じていることに従って]やる感じ」ということになります。ちなみに、このオートノミーは、オランダなど民主主義教育が徹底している国の教育では、自己コントロールしながら、自分で科目選択をしながらクラスの勉強をする、中心的な考え方でもあります。
ですから、外からこの≪やる気≫を強制することなど、到底できないことが分かりますね。大人からの献身的な世話と、子どもを個として認めて、子どもの自己コントロールを許しながら世話をするという、≪やり取りのある関わり≫を繰り返す中から、自ずから、≪やる気≫を子どもから エドゥカティオ 引き出すことができる、という仕掛けです。
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