音楽やリズムには、人を癒す力があるらしい。
ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』の第13章 Healing from trauma : Owing your self 「トラウマから癒されること :本当の自分を生きること」p.216の、第2パラグラフから。
しかし、周りは異質で怖いけれども、この集団のことはよく承知していました。その女性は倒れこむように座って、悲しくて、凍り付いていたのですが、ボストンにある、レイプをされた人たちの多くのグルーブと同様に、私が感じたのは、無力感でしたし、倒れている人に囲まれて感じたのは、私も気持ちの上では倒れこんだ感じでになる、ということでした。その時1人の女性が鼻歌を始めますと、静かに身体を前後に揺らし始めました。リズムが1つ始まりますと、少しずつ他の女性たちもそのリズムに加わりました。まもなく、グループ全体が歌い、身体を揺らし、ダンスを始めました。それは驚くべき変化でした。すなわち、人々は生気を取り戻して、皆の表情があってきて、生気が身体に漲りました。私はそこで私が目の当たりにしたことに心傾けることを誓うと同時に、リズムや讃美歌を繰り返し歌うことや身体を揺らすことが、トラウマ治療にいかに役立つのか研究しようと心に誓った次第です。
音楽やリズムや繰り返しのある動き、恐るべし。一見ばかばかしい、あるいは、何気ないことに、深い意味がある、ということは、臨床ではよくあることなんですね。ヴァン・デ・コーク教授も、何気ないリズムが示した現実に素直に心傾けて、常識や自分の研究の枠組みを捨てたことは、皆さんが思うほど簡単なことではありません。そのためには、かなりの訓練が必要だからです。常識や自分の研究の枠組みにとらわれてしまう人、常識や自分の研究の枠組みにとらわれてしまうケースの方が、囚われない人やケースよりも、はるかに多いんです。
必要なのは、真理に対する畏敬です。
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