エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

藤原保信先生の『自由主義の再検討』から

2015-06-04 02:18:14 | エリクソンの発達臨床心理

 

 藤原保信先生が亡くなって、21年。藤原保信先生は安曇野出身ですから、ゼミ合宿では、マイクロバスに揺られて、安曇野に行き、ワサビ田で、ワサビ入りのソフトクリームを食べたりもしましたね。日航ジャンボが御巣鷹山に落ちた夏、韓国の雪岳山(そらくさん)と智異山(ちりさん)にワンダーフォーゲルに行った後だと思います。

 その藤原保信先生の本に、岩波新書(293)の『自由主義の再検討』(1993,8)があります。すでに社会人でしたが、本屋に行って(まだAmazonがなかった)、買って、いそいそと呼んだ記憶があります。そのなかには、「白熱授業」で有名になった、サンデル教授の主張も重要なものとして出てきます。先生は、この本を書いて間もなく、ガンのために亡くなりました(1994,6)。この本は先生のご遺言だと私は考えています。

 小泉政権(2001年~2006年)の「聖域なき構造改革」以来、日本も様々な自由化がありました。それはひどいものでしたね。特に、ハケン、派遣労働を増やしたので、それまでも褒められたものでなかった労働政策が、小泉政権以来、滅茶苦茶になっている、と私は見ます。この自由化を支えた考え方が、自由主義、リベラリズム、とくに、経済自由主義 エコノミック・リベラリズムでしょう。

 これを批判したのが、サンデル教授や藤原保信先生ら共同体主義者 コミュニタリアニスト達であり、その考え方である共同体主義、コミュニタリアニズムです。藤原保信先生の『自由主義の再検討』の最終章も「コミュニタリアニズムにむけて」です。

 私は、今も生きるコミュニタリアニズムの考え方に、人間に対する見方があると思います。それは、人間は自己解釈的で物語的(ナラティヴな)存在であり、それは対話を繰り返すことを通して行われる、ということです。そして、今私が心理臨床を通して、子どもとその周りにいる大人を支援することは、子どもが、自分の辛い体験も、箱庭やコラージュなどを用いて「自分の物語」を育みつつ、肯定的に位置づけることを、お手伝いすることです。政治思想史から心理臨床へと、専門領域こそ変わりましたが、藤原保信先生から教えていただいたことを、今日も生かしていきたいと、思っております。

 藤原保信先生、ありがとうございます。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ルターの回心 | トップ | 日常と専門用語 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿