エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

倫理的想像力とπαρρησία パレーシア

2015-04-22 02:34:18 | エリクソンの発達臨床心理

 

 倫理的想像力。聴いたことがありますでしょうか?

 この言葉はいろんな人が言っているのかもしれませんが、私は大江健三郎さんがおっしゃる意味で、倫理的想像力を鍛えていくことが大事だと考えています。彼が言う「倫理的想像力」とはいったいどういうことでしょうか? 

 「想像力とは「今ある現実と未来の現実を作り変えようとする構想の事」ですが、倫理的想像力とは、「いまある復古的な潮流にさからい、現在から未来にかけて人間の現実的態度としていくべきものの、統合的なモデルです」(立花隆編『南原繁の言葉』p235とp236)といいます。

 Facebookを見ていましたら、音楽家の三枝成彰さんが「フェイスブックでこういうふうに発言することですら、管理されているんでしょう。「戦争反対」「憲法改正反対」とか「原発反対」とかなど発言すると、...必ず仕事を失ってしまう時代になりました」と述べていました。自分の仕事を失いたくないから、「見ざる言わざる聞かざる」になりやすい。ハッキリ物を言って、テレビに出れなくなったら、新聞のコラム欄をなくしたら、雑誌のコーナーをなくしたら、喰いっぱぐれてしまう、自分が損だ、という訳ですね。もうすでに、そんな時代になってしまっているんですね。復古的な潮流が激流になりつつある…。

 昔早稲田の3号館の4階の大教室で、鴨武彦教授の「国際関係論」を聴いたとき、なぜ人々が戦争に反対できなかったのか、とのインタヴューを、当時の人々にした話をしてくれたことがありましたね。このブログにも一度記しました。その時に、鴨武彦教授は、右手を左の腰のあたりに持って行って、握った手を右前に大きく旋回させてから、「これが怖かったんですね」とおっしゃいましたね。「つまり、軍刀、サーベルが怖かった」。でも、三枝さんによれば、今も刀の危険、暴力をこうむる危険が0ではないのしても、それよりも、仕事を失い危険の方がはるかに大きいでしょう。喰いっぱぐるのは嫌だから、特に「華々しい」仕事を失いたくないから、「見ざる聞かざる言わざる」を決め込む人も少なくないでしょう。

 いまこそ、「自分が感じていることを腹蔵なく、ハッキリ言うこと」、すなわち、παρρησίαパレーシアがとっても大事になりました。特に言論を生業とするジャーナリスト諸兄姉、いっそうの発奮を期待します(新聞、テレビ、メディア教育関係などに友人が何人かいるものですから)。

 

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