エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

#生きている実感を失う病 #多くの日本人もこれだ

2018-08-10 07:11:18 | ヴァン・デ・コーク教授の「トラウマからの
 
#虐待の記憶は肝心な点は正確 #真実は必ず明らかになる #ウソはバレル
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 ヴァン・デ・コーク教授の  The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『大切にされなかったら、意識できなくても、身体はその傷を覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』
 6章。「身体を失くすと,本当の自分も失くすよ」,p.101の,ブランクしたの第6パラグラフから。その前も一緒に。




 気持ちを表す言葉をなくすこと,アレキサイミア:いろんな気持ちを示す言葉が全くない



 私には夫を亡くした叔母さんが一人いまして,痛ましいトラウマを負わされた成育歴のある人でした。その叔母さんは,我々子どもにとっては,実際にはおばあちゃんでした。その叔母さんはよく訪ねてきて,たくさんのことをしてくれました。カーテンを作ってくれたり,台所棚を配置換えしてくれたり,子どもの服を作ってくれたり。しかも,とても無口でした。叔母さんは人を喜ばせることに熱心でしたが,何が楽しいのかは分かりませんでした。楽しいことを互いに楽しんで,数日した後,会話が途切れて,長い沈黙を埋めるのに苦労しました。おばさんの訪問の最後の日,私は叔母さんを空港まで車で送りました。空港では,おばさんは,お別れのぎこちないハグをしながら,涙を流しました。皮肉ではなくて,叔母さんは,ローガン国際空港の冷たい風のせいで,涙ができるわ,とこぼしました。叔母さんの身体は,悲しみを感じていたのですが,おばさんの気持ちはそれが分らなかったんです。叔母さんは,若い夫婦の我が家,一番近しい健在の親戚を,離れていきました。

 精神科医はこの現象をアレキサイミアと呼びます。ギリシャ語で,様々な気持ちを表す言葉がない,という意味です。トラウマを負わされた子ども等も,大人たちも,自分が何を感じているのかわからないのは,体感の意味が分からないからなんです。トラウマを負わされた人は,子どもでも大人でも,怒り爆発していても,「怒ってませんから」といいますもんね。怖そうな顔をしていても,「平気です」といいますしね。自分の身体が感じていることが分かりませんから,自分が必要と感じていることにも,無関心ですし,自分のことを気にかける試しもありません。それで,ちょうど善い時に,ちょうど善い程度に食べることもできませんし,必要な睡眠もとることもできません

 私の叔母みたいに,アレキサイミア(失感情語症)の人たちは,自分の気持ちを言葉にする代わりに,身体,態度で気持ちを示します。「時速100キロでトラックが突っ込んで来たら,どんな気持ちでしょうか?」と訊かれたら,たいていの人は,「そりゃ,怖いでしょ」,「恐怖で凍り付くわ」と応えるでしょう。アレキサイミア,失感情語症の人は,「どう感じるか? さあね,…ヒョイと避けたでしょ」という具合です。アレキサイミアの人たちは,様々な気持ちは,気にしたほうがいい何かのサインではなくて,身体の病気になってしまいがちです。怒ったり,悲しがったりするのではなくて,アレキサイミアの人たちは,筋肉痛,お腹の不調,その他,原因不明の様々な身体症状となってしまいます。心理的な拒食症の患者の四分の三,過食症の患者の半分は,様々な気持ちに混乱し,気持ちを言葉にすることができません。研究者らが怒った顔や困った顔をアレキサイミアの人たちに示しても,何を感じているのか分りません。

 アレキサイミアのことを私に教えてくれた最初の人々の一人は,精神科医のヘンリー・クリスタルでした。クリスタルは,千人以上ものホロコーストの生存者たちと共に働いて,大規模な心理トラウマを理解しようと努力した人です。クリスタル自身が強制収容所の生き残りでしたが,自分の患者たちは,仕事では成功していても,親しい関係は寂しく,冷ややかな人が多いことに気が付きました。自分の気持ちを押し殺ことは,仕事の世界に関心を向けることにはあっているけれども,高い代価を払わなくてはなりません。ホロコーストの生存者たちは,昔味わった身の毛もよだつ様々な気持ちを締め出すことが身について,その結果,自分が何を感じているのか分からなくなったんです。ホロコーストの生存者は,セラピーに関心を持つ人もほとんどいなかったんです。

 ウエスタン・オンタリオ大学のポール・フレウェンは,アレキサイミアで苦しい思いをしているPTSDの人たちの脳画像を撮り続けました。その研究協力者の1人は「私は自分が感じていることが分かりません。頭と身体がバラバラみたいですよ。まるで,トンネルの中,霧の中で生きているみたいです。何があっても,同じ感じです。何も感じないし,何もなしです。バブルバスに入っても,火傷をしても,レイプされても,同じ感じです。私の脳は,ものを感じることができません」と言いました。フレウェンと同僚のルース・ラニウスが発見したことは,自分の様々な実感に触れられなくなるほど,脳の自意識を司る部位は働かなくなる,ということでしたね。

 トラウマを負わされた人たちは,身体の中で何が起きているのかわからない場合が多いので,満たされない気持ちに微妙に応じることもできません。ストレスに反応するときはいつでも,「ぼうっとする」激しく怒るかすることしかできません。

 アレキサイミアの人たちが良くなるのは,自分の様々な体感と自分の様々な気持ちとの関係に,ゆるほど,と気付いて初めて可能です。それは,色盲の人たちが色の世界に入っていけるのは,グレースケールの濃さを区別して分かるようになって初めてできようになるのと,同じです。私の叔母さんや,ヘンリー・クリスタルの患者さんたちみたいに,良くなることをあきらめている場合が多いんです。過去の亡霊と正面から向き合うよりも,病院に行って,治らない病気の治療をする方がましだ,と無意識に心に決めているように見える場合がほとんどです。


生きている実感を失う病


 自分が生きている実感を忘れる梯子を(訳注:アレキサイミア 失感情語症から)もう一段下ったのが,離人症です。自分が生きている実感を失う病です。ウテの脳画像は,第4章でみたように,空っぽで,生きている実感を失う病をはっきり示していましたね。生きている実感をなくす病いは,トラウマを負わされた体験をしている間では,よくあることです。




 生きている実感をなくしたら,何のために生まれてきたのか,分かりませんでしょ。

 生きている実感を失う病に,実に多くのニッポン人がかかっているのは,巷で微笑みをあまり見ないことから,明らかでしょうね。

 

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