アリーナ・イブラギモヴァ(vn) イザイ作曲 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Op.27 全曲
第1番 ト短調/第2番 イ短調/第3番 ニ短調「バラード」/第4番 ホ短調/第5番 ト長調/第6番 ホ長調
2014年4月30日 トッパンホール
イブラギモヴァのリサイタル、素晴らしかった!
イザイの無伴奏ソナタ全曲という硬派なプログラムを、一夜で聴き通す集中力が自分にあるだろうか?
と事前には自信を持てないでいたのだが、それでもチケットを買ったのは、イブラギモヴァの実演にどうしても接したかったから。
かつて、毎日新聞社の「バッハをCDで究める」を書いたときに、彼女の「無伴奏ソナタとパルティータ」のCDを聴いて感銘を受けて以来の宿願だったのである。
そして、いざ聴いてみるとあっという間の2時間であった。
熾烈なまでの集中力でもって、この難曲を演奏し切る実力に脱帽。
しかし、それには「熱演」という名は値しない。
かといって、技巧に偏った冷たさも皆無。
何というのだろう。
絶望の中から希望の光を見出すような、或いは、苦痛の中で官能を覚えるような、相反する要素や情感が同時に鳴るような凄絶な演奏。
といっても言葉が足りないような、滅多に出会うことのない名演であった。
全曲ともに優れていたが、特に「第3番」「第6番」の単一楽章による2曲が図抜けていた。
今後、残る4曲がこのレベルまで高まれば、途轍もないことになる。
音楽の素晴らしさとともに美しかったのが、演奏する姿。
弓の運びに全くの無駄がなく、しかも必要最低限の力で最大限の音を生み出す技の凄さは、弦楽器を弾かない私の目にも明らか。
弓の毛がこんなに切れても良いのだろうか? というほどの入魂の演奏に、聴いている私の胸が熱くなった。
終演後の聴衆の拍手が熱く、盛大だったのも当然だが、アンコールはなし。
しかし、イザイ無伴奏全曲という長い旅の後で、それを物足りなく思う聴衆はなかっただろう。
5月3日の名古屋公演に出掛けたいくらいだが、残念ながら所用で叶わない。
次の来日を今から心待ちとするにしよう。
アリーナ・イブラギモヴァ・プロフィール
http://www.toppanhall.com/concert/artist/IBRAGIMOVA_Alina.html