福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

シューベルトのヴァイオリンのための作品全集

2014-05-01 08:36:24 | レコード、オーディオ


今朝は、心穏やかにシューベルトのヴァイオリン・ソナタを聴いている。
イヴラギモヴァとティベルギアンの共演による英hyperion盤である。

昨夜のギリギリの緊張感とは別の寛ぎの中に、憂愁と激情を秘めた名演。
録音も優秀。貧しいCDのフォーマットでさえ、これほど良い音なのだから、SACDで聴きたかった。ハイレゾの配信はあるのかな? 後で調べてみよう。

音質の限界から、通常のCDには興味を失っている私が自ら禁を破り購入したのは、ズバリ、イヴラギモヴァのサイン目当て(笑)。
サインは流れ作業的で、日本のアイドル歌手のサイン会のように一人一人の目を見つめて微笑んでくれることはなかったけど、音楽家は演奏が本分なのだから良しとしよう。



次回以降の来日では、いつかバッハの無伴奏全曲を聴きたいものだ。同曲のハイペリオンへの録音が5年前、イヴラギモヴァ24歳のとき。今ならもっと深く、大きな演奏を聴かせてくれるだろう。

イブラギモヴァ・リサイタル イザイ無伴奏全曲!

2014-05-01 00:44:35 | コンサート


アリーナ・イブラギモヴァ(vn) イザイ作曲 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Op.27 全曲

第1番 ト短調/第2番 イ短調/第3番 ニ短調「バラード」/第4番 ホ短調/第5番 ト長調/第6番 ホ長調

2014年4月30日 トッパンホール


イブラギモヴァのリサイタル、素晴らしかった!
イザイの無伴奏ソナタ全曲という硬派なプログラムを、一夜で聴き通す集中力が自分にあるだろうか?
と事前には自信を持てないでいたのだが、それでもチケットを買ったのは、イブラギモヴァの実演にどうしても接したかったから。
かつて、毎日新聞社の「バッハをCDで究める」を書いたときに、彼女の「無伴奏ソナタとパルティータ」のCDを聴いて感銘を受けて以来の宿願だったのである。

そして、いざ聴いてみるとあっという間の2時間であった。
熾烈なまでの集中力でもって、この難曲を演奏し切る実力に脱帽。
しかし、それには「熱演」という名は値しない。
かといって、技巧に偏った冷たさも皆無。

何というのだろう。
絶望の中から希望の光を見出すような、或いは、苦痛の中で官能を覚えるような、相反する要素や情感が同時に鳴るような凄絶な演奏。
といっても言葉が足りないような、滅多に出会うことのない名演であった。
全曲ともに優れていたが、特に「第3番」「第6番」の単一楽章による2曲が図抜けていた。
今後、残る4曲がこのレベルまで高まれば、途轍もないことになる。

音楽の素晴らしさとともに美しかったのが、演奏する姿。
弓の運びに全くの無駄がなく、しかも必要最低限の力で最大限の音を生み出す技の凄さは、弦楽器を弾かない私の目にも明らか。
弓の毛がこんなに切れても良いのだろうか? というほどの入魂の演奏に、聴いている私の胸が熱くなった。

終演後の聴衆の拍手が熱く、盛大だったのも当然だが、アンコールはなし。
しかし、イザイ無伴奏全曲という長い旅の後で、それを物足りなく思う聴衆はなかっただろう。
5月3日の名古屋公演に出掛けたいくらいだが、残念ながら所用で叶わない。
次の来日を今から心待ちとするにしよう。





アリーナ・イブラギモヴァ・プロフィール
http://www.toppanhall.com/concert/artist/IBRAGIMOVA_Alina.html