福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

クイケン&ラ・プティット・バンドによるバッハ「管弦楽組曲」全曲演奏会

2014-05-29 23:59:45 | コンサート


今宵はシギスヴァルト・クイケン&ラ・プティット・バンドによるバッハ「管弦楽組曲」全曲 + ブランデンブルク協奏曲第5番の演奏会を聴いてきた。
会場は、この春にオープンしたばかりの「よみうり大手町ホール」で、昨夜につづく2夜目(同プログラム)である。

J.S.バッハ:
  管弦楽組曲 第1番 ハ長調(BWV1066)
  ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調(BWV1050)
  管弦楽組曲 第3番 ニ長調(BWV1068)

  休憩

  管弦楽組曲 第2番 ロ短調(BWV1067)
  管弦楽組曲 第4番 ニ長調(BWV1069)

2014年05月29日(木)19時00分開演
よみうり大手町ホール



演奏順は上記のとおり。
最大の編成は「第4番」で16 名(Ob3,Tp3,Fg,Timp,弦7,Cemb)。
最小は「第2番」で各パート1名=6名(Fl,1st.Vn,2nd.Vn,Va,Viol,Cemb)。
ラッパと太鼓付きの賑やかな作品をコンサートの頭と尻に置くという流れは、とても自然で心地よかった。

管弦楽組曲では、各曲とも序曲の後半のリピートは省略。
これは、プログラムの長大さを思えば妥当な判断であろう。

さらに、第1番、第4番に於ける舞曲では、リピート時にオーボエを沈黙させて弦のみで演奏するなどニュアンスの変化にも富んでいた。
今回の編成で目を引いたのが8フィートのヴィオローネ、および曲によってはヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(肩かけチェロ)の使用。
プログラムの解説によるとバッハが行ったであろう演奏スタイルを踏襲したとのことだが、
通常より小さめのヴィオローネであるため、最初のうちは耳が慣れず、正直、低音に物足りなさもあった。
しかし、プログラムが進むうちに、気にならなくなるばかりか、これが当然のように思えてくるから、人の感覚とは不思議なものだ。
ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを実演で観る(聴く)機会は今回はじめてであったが、
肩に掛けた楽器が胸の辺り、つまり頭部に近い位置にあるため、不謹慎ながら田端義夫を連想してしまった(笑)。

演奏は、これみよがしのところのない、きわめて自然体。
ティンパニすら常に控えめな音量で、人を驚かしたり華麗なテクニックを誇示する場面は皆無。
洗いたての木綿のシャツの肌触りというのか、あるいは古い木造建築の温もりというのか、そういったものに似た感触だ。
なんだか、温泉で身も心も寛いだような気分。
じんわりと心の温もるパフォーマンスを繰り広げてくれたメンバー一同に心よりの感謝を捧げたい。

ホールの音響も良かった。
わたしの席は、かなり後方であったけれど、小編成の古楽アンサンブルの綾がきっちり届いてきた。
残響も少なすぎず、多すぎず。
もう少し前の方で聴けたなら、さらに良かっただろう。
木を基調とした内装も美しく、落ち着きがあって好感度抜群。
「また聴きに来たい」と思わせるとともに、「ここで演奏したい」という意欲も掻き立てられた次第。

さて、最後にどうしても触れておきたいのは、聴衆の質の高さ。
満席にもかかわらず、演奏中に目を閉じると無人ではないのか? と思わせるほどの静けさと集中力の高さ。
咳払いさえ殆どなかったのではないか?
こういうの、久しくなかった。
フライングで拍手をする者も、場違いなブラヴォーを発するものもなく、暖かく力強い拍手を送り続ける。
プレイヤーたちも本当に嬉しそうだったな。

追記
演奏時間が長かったため、電車の時間の都合でアンコールを聴くことは断念。
モニタースピーカーから流れる管弦楽組曲第4番の終曲「レジュイサンス」に後ろ髪を引かれつつ、ホールを後にした。

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イダ・ヘンデル & チェリビダッケのブラームス

2014-05-29 10:05:51 | レコード、オーディオ
今朝の目覚めの音楽はこれ。



ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77

ヴァイオリン: イダ・ヘンデル
セルジュ・チェリビダッケ指揮 ロンドン交響楽団

録音: 1953年3月6日 アビーロード・スタジオ

英TESTAMENT SBTLP 1038(2013)

英オリジナル・プレスになかなか手が出せないでいるうちに、英TESTAMENTからアナログ復刻盤が出たということで、早速入手。録音から丁度半世紀後の復刻というのが素敵だなぁ。

これは、演奏、録音、復刻ともに素晴らしい! ヘンデルの瑞々しい情感が迸り、オケも紛れのないチェリビダッケ・サウンド。いやあ、たまらん。

50年代前半の録音といえば、英デッカが図抜けていると認識していたが、いやはや、これは侮れない。

オリジナル盤を聴いていないので、あくまでも想像に過ぎないけれど、ある意味、オリジナルを凌駕しているのではないか?
味わいや香りは別にして、レンジの広さとか、情報量の大きさに於いて。
(ただし、第3楽章には、マスターテープの劣化が明らかに認められる。ちょっと残念!)

英TESTAMENTの復刻盤は、クリュイタンスのラヴェル管弦楽曲全集、シューリヒトのブルックナー#9など、今のところ外れがない。
あ、もちろん、カイルベルトのリングやクナの「神々の黄昏」も忘れてはいけない。

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