福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

朝比奈先生の「第九」が導いてくれた三善作品との出会い

2014-05-27 01:22:14 | コーラス、オーケストラ
花いっぱい音楽祭で三善作品浸っているうちに、スイッチが入った。
久しぶりに三善晃作品に挑みたくなってきたのだ。

といっても、若い頃のわたしは「合唱人」ではではなかった。
あいにく、通っていた中学にも高校にも合唱コンクールはなかったし、合唱部とも無縁だった。

はじめての合唱らしい合唱への参加が、大学2年生の時。
朝比奈隆先生指揮の「ミサ・ソレムニス」というのだから、どうしようもない。
その後も、しばらくは邦人の合唱作品との縁はまったくなかった。

三善晃作品との出会いは、田中信昭先生の指導される「唄う会」に於いてである。
夏休みの数日間、全国の合唱人、三善ファン、或いは田中先生の信者が、野沢温泉に合宿して、三善作品だけを練習して本番はなし、という会。
その時の課題曲は「地球へのバラード」(谷川俊太郎)と「田園に死す」(寺山修司)だったように記憶する。
確か、「唱歌の四季」は、まだ市販されていなくて、手書き譜のコピーで歌ったような・・・。

当時のわたしは、発声もまだまだだったこともあり、自分に満足できたわけでは全くなかったけれど、
それまでのあらゆる経験の外にある音楽、その無限の広がりに大いに感銘を受けたものだ。



本年中は既にスケジュールが一杯であるが、来年は時間に余裕が出来る。
リスト「十字架の道行き」とともに三善作品を指揮することを、二つの新しい柱にしようかと考えているところ。
「地球へのバラード」「五つの願い」「クレーの絵本 第1集、第2集」などは、一から勉強し直したい。
もちろん、コーラスのメンバーは優秀でなくてはならない。

ところで、田中信昭先生との出会いは、桐朋学園を卒業する年、学校を挙げて行った「第九」演奏会。
本番は秋山和慶先生の桐朋学園オーケストラで、コンマスは同学年の豊嶋泰嗣君。
田中先生の素晴らしいご指導が楽しみで、夢中になって練習に通ったものだが、それは終わりでなく、始まりだった。

その直後に、田中先生の指導されている東京芸大のコーラスがNHK交響楽団の「第九」に出演することを知ったのだ。
指揮は、ギュンター・ヴァントの代役の朝比奈隆先生で、しかも4日間連続公演だという。
「これは、歌うしかない!」
ということで、田中先生に「僕を芸大のコーラスに乗せてください」と直訴し、
「すべてのレッスンに1秒も欠けることなく出席したら」という条件で快諾して頂いた。
そこで、桐朋学園を卒業したばかりの1986年4月、聴講生という形で芸大に通ったのである。
田中信昭先生に「唄う会に来なさい」とお誘いを受けたのも、芸大でのレッスンの休み時間だった。

いま、思い出しても、素晴らしい体験だったなあ。