福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

銀座ウエストでベートーヴェンに出会う

2014-05-06 16:03:56 | グルメ


博物館見物に疲れたので、銀座ウエストで休憩。暖かなチョコレートをまぶしたケーキは、仄かな甘さで絶品。ヒンヤリと口の中に溶けるバニラ・アイスとの相性も抜群。
紅茶もかなりの美味。しかも、おかわり自由。身体に毒なのは分かっているものの、また訪れくては。 次回はシュークリームかミルフィーユにしよう!

店内に鎮座するは、ベートーヴェン。ケーキの幸せな甘さと苦渋に満ちたベートーヴェンの表情のコントラストがたまりません。

因みに、店内に流れるBGMは、サン=サーンスの動物の謝肉祭でした。


栄西と建仁寺展を観る

2014-05-06 15:35:18 | 日記






連休最後の休日、上野は東京国立博物館・平成館に栄西と建仁寺展を観てきました。
お目当ては、ご多分に漏れず、俵屋宗達の「風神雷神」。休日でしたが、やや混雑といったところ、心配したほどの行列もなくホッとしました。

感想を述べるほどの造詣はないのですが、仏像、書、掛け軸、茶器など、見応えが十分すぎて、ヘトヘトになりました。

写真の行列は、お隣の本館で催されてきるキトラ古墳展。こちらは凄い人気で、100分待ちとのこと。日本にこんなに古墳ファンって居ましたっけ(笑)? 寒風吹き荒ぶ中、ご年配の方も少なくなく、その逞しさには脱帽。なんだか、かつての大阪万博のアメリカ館の「月の石」目当ての長い行列(古い!)を思い出してしまいました。



東京国際フォーラムのこと

2014-05-06 10:31:02 | コンサート
10年目にして、はじめて体験したラ・フォル・ジュルネ。

これまで、なぜ行かなかったのか? というと、持ち前の「人が騒ぐことに背を向けたくなる」という天の邪鬼もあるが、東京国際フォーラムという空間がクラシック音楽に不向きな気がしていたことも理由のひとつだ。

実際、ホールAには、ポピュラーのコンサートで何度か訪ねているが、あの収容人員5000人を越す巨大な空間でクラシック音楽の演奏が成り立つとは到底想像できない。他のホールも似たり寄ったりだろうと勝手に想像していたのである。

しかし、今年は、リスト「十字架の道行き」が聴けるなら、たとえ体育館でも、倉庫でも構わない、という気持ちで、自らのポリシーを曲げて足を運ぶことにした。

今回、体験したのは前の記事にも書いた通り4つのコンサート。
最初の2つがホールCで、コルボは2階センターの上手(向かって右)寄り、ケフェレック&横浜シンフォニエッタは2階レフトの張り出した席で聴いたが、どちらも特別良くはないけど、鑑賞には十二分であった。高さがあってステージに近いという意味で、後者の張り出し席の方が自分には心地よかった。ただ、1階席とを隔てる壁が高過ぎるのはご愛嬌。

つづくペヌティエのリサイタルはホールD7。これは、まるで展示場のような殺風景な空間。座席も可動式の粗末なもので、幅も狭く座り心地が頗る悪い。嫌な予感はしたが、いざ演奏が始まると悪くない。響きがデッドな故に、ペヌティエ奏でるスタインウェイの音色が、何の脚色もなく、生々しく耳朶を震わせる。
ペヌティエの奏でるモーツァルトは、きらきら星変奏曲では天国の花園を歩くよう、アタッカで奏された幻想曲とソナタ(ともにハ短調)では、生と死の境を彷徨うような深い音楽で、その深遠さとホールの無機質のコントラストが、またひとつの特殊な効果を生んでいたのは面白かった。

最後のリスト「十字架の道行き」は、ホールB5。
ここは巨大な会議室というか、宴会場というか・・・。ステージをコの字型に囲む配置は良いとして、床は毛足の長いフカフカの絨毯敷き。
「これでは、音が吸われて響くまい」
と思ったら案の定、残響はほぼゼロ。
私の指揮するアマチュアコーラスなら惨敗必至だが、 もちろん、昨日の演奏家たちは違った。

残響なしは、ピアニスト以上に歌い手には辛い条件の筈だが、それをモノともしないヴォックス・クラマンティスの強い精神力と技術。ペヌティエのピアノもモーツァルト以上の入魂であることは昨日も書いた。

ホールD7も、ホールB5も、本来、演奏会場としては失格であろう。
しかし、私は思った。
では、コンサート専用を謳うサントリーホールや横浜みなとみらい大ホールはどうなのか? と。
あの音が頭上を通り抜けてしまう1階席で聴くより、この展示場であったり、宴会場に過ぎない東京国際フォーラムの諸会場の方が、よほど演奏家の魂に触れることが出来るのではないか? と。
もっとも、「十字架の道行き」は、本来なら教会のように豊かな残響の空間で、演奏されるべき作品で、昨日は異形の感動と呼ぶべきなのだろうが・・・。

というわけで、思いの外、楽しめたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン。
来年は別会場も訪ねてみることにしよう。しかし、いつかは、出演する側に回りたいものだ。



十字架の道行き 追記あり

2014-05-06 01:50:38 | コンサート


リスト「十字架の道行き」を実演で聴ける日が訪れるとは、つい先日まで思いもしなかった。
このポピュラーとは言い難い、しかし、本物の感動の傑作を、しかも、超一流の演奏家で聴ける、というのは、ラ・フォル・ジュルネならではの好企画と呼べるだろう。

ヤーン=エイク・トゥルヴェの指揮の下、コーラスは精鋭13名からなるヴォックス・クラマンティス
全く虚飾のない清らかな発声は、上辺の美しさよりは内面性を志向し、祈りの痛切さは比類ない。
イエスを担当するバリトン独唱も、本質だけを捉えて無駄がなく、イエスの悲痛を伝えて止まない。

ジャン=クロード・ペヌティエのピアノは神の域。
昼間に聴いたモーツァルトも素晴らしかったのだけど、リストでは作品に同化するような斬り込み方。その入魂ぶりが半端でなく、まるで、目の前でイエスの受難を体験するような深い衝撃を与えられた。否、彼は確実にそこで追体験している。

今日の4演目の締め括りが、「十字架の道行き」で良かった。あまりの感動に、もう暫く何も聴きたくないから。

ところで、こんなに凄い演奏を聴いてしまうと、自分で指揮するときに、つまらない演奏はできない。大コーラスではなく、精鋭を揃えたアンサンブルで臨むとしよう。

追記
この記事を書き終えてから気付いたのだが、歌手の数が13名だったということに意味がありそうだ。
バリトンの1人がイエスであるとすると、残りは12人の弟子たち。
つまり、最後の晩餐に居合わせた人の数ということになる。
うーん、深い。