明鏡   

鏡のごとく

『蛍日記』

2015-06-08 22:00:05 | 詩小説
6月8日 月曜日 雨。
21時。

父から電話があった。
あの海の見える場所を手放したいという。
いつか受け継ぎ、海の見える道の横で、猫と髪結のお袋になり。
言葉を切っては、梳かし、洗い、乾かし整えることも考えたが。
自力でうみだし。
手に入れよ。
ということだろうか。

ところで、今、この蛍池。
蛍が、二度、ぴかぴかと光った。
あの子だろうか。
まばゆいばかりにツーツーと夜にだけ通用する暗号のように光った。
挨拶を光で返すこともできず、言葉に変換した。
またあとでね。
明日も来るよ。
ツーツーなけないので、言葉にするか、歩くか、立ち止まるかして、蛍の光を探すのだ。
手に入れるつもりはない。
蛍の光とそのような言葉を、ただただ探すのだ。