昨年、居心地のよかったいきつけのメタルバーが閉店してしまって、最近は大阪に寄った際にちょくちょく梅田の暗黒バーに足を運んでいるのだが、先日店に入るとけっこういっぱいの常連客で賑わっており、しかもその辺の普通のバーでありがちな俺の人生学的な興味もクソもない話題が中心となっていて、マスターはいじられキャラのひとりの客をひやかすことに余念がなく(以前もそれをやっていた)、かなりの疎外感を味あわされていた。
しかもBGMがアクセプトまがいのパワーメタルが中心で(こういうのダメなんだよな)、その日はマスターの気まぐれでそういう括りで流しているようで、私がボソっとリクエストしたメタルはことごとく聞き流されてしまった。
元々飲み仲間のなれ合い的な雰囲気が苦手で、音楽という共通の話題があるからこそこういった場所に来ているのに、音楽の話題そっちのけで常連客中心でワイワイやられるこの空気に私の我慢が限界に達するのは時間の問題であった。
本当なら他にいく所もないので朝までいるしかないのだが、始発まで2時間以上もあったにも関わらずいきなり席をスクっと立ちあがって会計を告げた。
当然「えっ?」という顔をされたが、そんなことお構いなしでお見送りも待たず足早に店を出ていった。
まぁ私が店を出ていく決心をしたのは、実はちょっと行ってみたいバーがあったからなのであるが。
その暗黒バーのトイレにそのバーの名刺が貼られていて、その妖気漂うあやしい店名が以前から気になっていたのである。
そのバーの名前は、パノラマ島。
学生時代、江戸川乱歩作品を貪るように愛読していた私には、なんと魅惑的な店名であることか!
おそらくミュージックバーというワケでもないだろうし、そこのマスターが乱歩好きで乱歩の作品名を拝借したという確証もなかったので、得体は知れなかったがとにかく行ってみることにした。
場所は西天満らへんにあるらしく、さっき暗黒バーでなんとなく場所を確認していたので、夜中の2時過ぎにいかがわしいラブホ街を通り抜け、ポン引きの勧誘をかわしながら、寂れた通りをズンズン進んでいくと、一際照明の明るい店舗があって近づいていくとそこがまさに探し求めいていたバーであった。
赤い窓枠に赤いカーテン。うん、雰囲気やよし。
バーは2階で営業しているらしく、壁一面赤く装飾された階段を上がっていった。
このドアの飾りに直面して、なにかしらゾッとする一種異様な戦慄を感じないではいられなかった。
もしやこの仮面の眼孔の奥からマスターが誰が来たか覗いているのではないかしら・・・・
そして、この扉の向こうには、一体どのような妖艶で犯罪的な世界が待っているのだろうか。
おそるおそる店のドアを開けると、マスターがひとり店でヒマそうにしていた。
水夫の格好をしており、名刺にも島長と書かれていてなかなか己の世界観を持っている人物のようだ。
とりあえず、江戸川乱歩好きで店名に惹かれて店を訪れてみたという旨を伝えると、確かにマスターも乱歩が好きで店名も乱歩の『パノラマ島綺譚』から拝借したものだということを話してくれた。
まぁだからといってこの店がべつに猟奇探偵趣味専門のバーっていうわけじゃなくて、あくまでバーの店名としてシャレているから採用しただけで、どのような客が来ても対応するごく普通のバーとのこと。
だから、身分を隠して怪しいエロティシズム遊戯に耽るなんて行事もないし、なにかしらペテン師めいた不可思議な犯罪に巻き込まれるなんてこともないみたいだ。
実際、私の後から入ってきた3人連れの酔っ払いの客なんか、窓際のソファ席に座ってただ食事をしにきただけみたいだったし。
案外シャレオツな雰囲気のバーで、お食事処としても機能している。
ちなみに店内のBGMでかかってたのはTHE WHOの『Tommy』。
マスター(島長)は非メタル派でプログレッシヴロックなども通ってなくて、あまり音楽趣味は咬み合わなかったが、やはり彼も筋少は好きらしかった。
江戸川乱歩を読みだしたのも、実は筋少の影響が強かったらしく、その辺は私と同じだ。
その夜はナゴム時代のあの放送禁止となった「ドリフター」の話で盛り上がってしまった。
マスター自身音楽に携わってきた人で、現在もオリジナルバンドの一員として活動しており、ステージでは道化のメイクを施すらしい。
やっぱりな。それは乱歩の『地獄の道化師』からインスパイアされたキャラに違いない。
店の書棚には春陽堂出版の江戸川乱歩全集がズラリと並べられていた。
春陽堂のは多賀新の猟奇的銅版画がほどこされた装丁で、私もこの全集を学生の頃集めていた。
太陽の塔が祭られてあったのは、たいへん心騒がされた。
いや、店のオシャ怪しい雰囲気といい、マスターの乱歩趣味といい、いたく気に入り申した。
あとこの店に足りないのは、人間椅子とキング・クリムゾンくらいかな。
いや、この店のBGMにクリムゾンの『太陽と戦慄』はすごく合うと思うんだ。
しかし、成り行きとはいえ、いい店を見つけたものだ。
これで始発まで過ごすいい逃げ場、いや、私の猟奇趣味を満たす格好の居場所ができた。
やった、やったぞ。やったやったーー。
そしてその2週間後、夜中の3時に己の所持している乱歩本や筋少や人間椅子やブルー・オイスター・カルトのCDを店に持ちこんで、カウンターに座ってニヤニヤしながらひとりソルティドッグをチビチビやっている私の姿があった。
今日の1曲:『パノラマ島へ帰る』/ 筋肉少女帯
しかもBGMがアクセプトまがいのパワーメタルが中心で(こういうのダメなんだよな)、その日はマスターの気まぐれでそういう括りで流しているようで、私がボソっとリクエストしたメタルはことごとく聞き流されてしまった。
元々飲み仲間のなれ合い的な雰囲気が苦手で、音楽という共通の話題があるからこそこういった場所に来ているのに、音楽の話題そっちのけで常連客中心でワイワイやられるこの空気に私の我慢が限界に達するのは時間の問題であった。
本当なら他にいく所もないので朝までいるしかないのだが、始発まで2時間以上もあったにも関わらずいきなり席をスクっと立ちあがって会計を告げた。
当然「えっ?」という顔をされたが、そんなことお構いなしでお見送りも待たず足早に店を出ていった。
まぁ私が店を出ていく決心をしたのは、実はちょっと行ってみたいバーがあったからなのであるが。
その暗黒バーのトイレにそのバーの名刺が貼られていて、その妖気漂うあやしい店名が以前から気になっていたのである。
そのバーの名前は、パノラマ島。
学生時代、江戸川乱歩作品を貪るように愛読していた私には、なんと魅惑的な店名であることか!
おそらくミュージックバーというワケでもないだろうし、そこのマスターが乱歩好きで乱歩の作品名を拝借したという確証もなかったので、得体は知れなかったがとにかく行ってみることにした。
場所は西天満らへんにあるらしく、さっき暗黒バーでなんとなく場所を確認していたので、夜中の2時過ぎにいかがわしいラブホ街を通り抜け、ポン引きの勧誘をかわしながら、寂れた通りをズンズン進んでいくと、一際照明の明るい店舗があって近づいていくとそこがまさに探し求めいていたバーであった。
赤い窓枠に赤いカーテン。うん、雰囲気やよし。
バーは2階で営業しているらしく、壁一面赤く装飾された階段を上がっていった。
このドアの飾りに直面して、なにかしらゾッとする一種異様な戦慄を感じないではいられなかった。
もしやこの仮面の眼孔の奥からマスターが誰が来たか覗いているのではないかしら・・・・
そして、この扉の向こうには、一体どのような妖艶で犯罪的な世界が待っているのだろうか。
おそるおそる店のドアを開けると、マスターがひとり店でヒマそうにしていた。
水夫の格好をしており、名刺にも島長と書かれていてなかなか己の世界観を持っている人物のようだ。
とりあえず、江戸川乱歩好きで店名に惹かれて店を訪れてみたという旨を伝えると、確かにマスターも乱歩が好きで店名も乱歩の『パノラマ島綺譚』から拝借したものだということを話してくれた。
まぁだからといってこの店がべつに猟奇探偵趣味専門のバーっていうわけじゃなくて、あくまでバーの店名としてシャレているから採用しただけで、どのような客が来ても対応するごく普通のバーとのこと。
だから、身分を隠して怪しいエロティシズム遊戯に耽るなんて行事もないし、なにかしらペテン師めいた不可思議な犯罪に巻き込まれるなんてこともないみたいだ。
実際、私の後から入ってきた3人連れの酔っ払いの客なんか、窓際のソファ席に座ってただ食事をしにきただけみたいだったし。
案外シャレオツな雰囲気のバーで、お食事処としても機能している。
ちなみに店内のBGMでかかってたのはTHE WHOの『Tommy』。
マスター(島長)は非メタル派でプログレッシヴロックなども通ってなくて、あまり音楽趣味は咬み合わなかったが、やはり彼も筋少は好きらしかった。
江戸川乱歩を読みだしたのも、実は筋少の影響が強かったらしく、その辺は私と同じだ。
その夜はナゴム時代のあの放送禁止となった「ドリフター」の話で盛り上がってしまった。
マスター自身音楽に携わってきた人で、現在もオリジナルバンドの一員として活動しており、ステージでは道化のメイクを施すらしい。
やっぱりな。それは乱歩の『地獄の道化師』からインスパイアされたキャラに違いない。
店の書棚には春陽堂出版の江戸川乱歩全集がズラリと並べられていた。
春陽堂のは多賀新の猟奇的銅版画がほどこされた装丁で、私もこの全集を学生の頃集めていた。
太陽の塔が祭られてあったのは、たいへん心騒がされた。
いや、店のオシャ怪しい雰囲気といい、マスターの乱歩趣味といい、いたく気に入り申した。
あとこの店に足りないのは、人間椅子とキング・クリムゾンくらいかな。
いや、この店のBGMにクリムゾンの『太陽と戦慄』はすごく合うと思うんだ。
しかし、成り行きとはいえ、いい店を見つけたものだ。
これで始発まで過ごすいい逃げ場、いや、私の猟奇趣味を満たす格好の居場所ができた。
やった、やったぞ。やったやったーー。
そしてその2週間後、夜中の3時に己の所持している乱歩本や筋少や人間椅子やブルー・オイスター・カルトのCDを店に持ちこんで、カウンターに座ってニヤニヤしながらひとりソルティドッグをチビチビやっている私の姿があった。
今日の1曲:『パノラマ島へ帰る』/ 筋肉少女帯
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