AMASHINと戦慄

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HPLの落とし仔その他の恐怖

2011年03月15日 | ルルイエ異本
最近リン・カーター著『クトゥルー神話全書』を読んでて、今日がH.P.ラヴクラフトの命日であることを知った。

1937年3月15日、H.P.ラヴクラフトはプロヴィデンスのジェーン・ブラウン記念病院でブライト病と腸癌の複合症によって、46年と7ヶ月というその短い生涯を閉じた。
本書で紹介されていた、クラーク・アシュトン・スミスが<ウィアード・テイルズ>に送ったラヴクラフトの死を惜しむ挽歌が感動的である。

御身は旅立って行かれた ここよりも旧き流れを探し求めて
魔術たけなわなるアーカムか?
はたまた親しき猫たちと共に 新しき秘密の森を探索しているのか
(中略)
御身はウルタールへ あるいはナスへと帰郷したのか?
朧なるカダスに君臨する いと高き王が 気高く賢き大使を呼び戻したか?
もしくは暗黒神クトゥルーが印を送りたるか

本書は『クトゥルー神話全書』と銘打ってはいるが、初心者向けのガイドブックというより、ラヴクラフトという作家のひととなり、いかにしてクトゥルー神話が体系化していったかなど、周辺作家宛の書簡や興味深いエピソードなどを交えて綴られた、いわゆるクトゥルーマニア、リン・カーターの研究書である。
まぁ散々クトゥルー神話ガイド的な著書を読んできている私としては、それほど目新しい話題はなかったが、それでも難解用語や、書物にまつわる新たな事実などを知るにつけ、心躍らされずにはおれなかった。
“自家薬籠中”とか“折衷的(「模倣的」を婉曲に言い表したもの)”とか、“サイコポンポス”など、普段使わんような単語を新たな知識として吸収できることもよい。
「物議を醸すエルトダウン断片」は、ラヴクラフトの知己だったフランクリン・ライトの創造書だったとか。ウィンタース=ホール牧師じゃなかったの?
あと、訳者が注釈でリン・カーターの間違った記述にいちいち突っ込んでるところもウケた。

本書には巻末に詳細なクトゥルー神話作品目録の他、クトゥルー神話固有名詞比較表が収録されているのは今後のクトゥルー研究に大いに役立つのではないかと。
クトゥルー本は訳者によって表記がコロコロ変わりますからね~
例えば、クトゥルー(Cthulhu)の表記だけでもこれだけある。

クルウルウ、クトゥルフ、ク・リトル・リトル、クスルウー、クートウリュウ、ク・ス=ルー、ク・スルフ、クトルット・ルットルトル・トゥゲザー・・・・・


ところで、純粋な幻想怪奇小説ファンは別として、クトゥルー神話ってみなさんどのような入り口から興味を持たれるようになるのだろうか?
テーブルトークRPG?TVゲーム?マンガ?不可解な自分の先祖にまつわる調査?旧支配者からの託宣?

私は間違いなくメタル・ミュージックの影響だ。
クトゥルーナンバーとしてはMETALLICAの“クトゥルーの呼び声”が有名だが、私の場合は人間椅子の“狂気山脈”がクトゥルー神話を意識した最初の曲だった。
そして同時期にハマっていたMORBID ANGELの背徳的ナンバー“ANGEL OF DISEASE”のサビで唱えられる、あまりにもおぞましいシュブ=ニグラス召喚の呪文!
今では音楽以上にクトゥルー神話にのめりこむハメとなってしまったが・・・

人気ヘヴィ・メタル・バンドIRON MAIDENの『死霊復活』のジャケットには、エディの墓標にアラビアの狂詩人アブドゥル・アルハザードの4行連句とH.P.ラヴクラフトの名前が刻まれている。



そういえばリン・カーターは本書で、1968年頃に活躍したシカゴのロックバンドH.P.LOVECRAFT(なんというヒネリのなさ!)についても言及している。
このグループの会社名が「ダニッチ・プロダクション」であることも興味深い。



今日の1曲:『白い帆船』/ H.P.LOVECRAFT

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