最近中古CD店ばかり行っていたのだが、久しぶりに新譜輸入CD店に寄って、中古店ではお目に掛かれなかった品をみつけた。Andreaeのブルックナー全集である。ヨッフム、ハイティンク、ヴァント、スクロヴァチェフスキ、ロジェストヴェンスキー、シャイー、カラヤン、バレンボイムなど、目ぼしい全集は大体耳にしたと思っていたが、これは、初めて見た。ウィーン交響楽団との全集録音だという。良く見ると1953年録音。早い。そんな全集知らなかった。顔も上品なおじさんである。薄型紙ボックスである。欲しい、欲しすぎる。けれども値段がやけに高いのだ。パーテルノストロのお買い得セットの約十倍の価格である。この世界の値段の付け方の基準は一体どこにあるのだ。この機会を逃すのも惜しいし、清水の舞台から飛び降りたつもりで購入してしまった。家に帰ってHMVの通販サイトで調べると、指揮者はスイス人のフォルクマール・アンドレーエという人物で、このブルックナー交響曲全集は世界初録音だという。ウィーン響がそんな偉業を成し遂げていたとは驚きである。地味だが凄いウィーン響である。さっそくステレオで聞いてみた(録音はモノラル)。音がきれいだ、雑音がない、ということにまず驚いた。放送録音という性質上だろう、きれいに録れている。肝心の演奏の方も秀逸である。アンドロメダで出ている初期のシューリヒトのブルックナーのようにわけのわからない怪物性はないが、端正でバランスが取れている。全く乱れがない。完璧な構築美で知られるギュンター・ヴァントと比べても遜色ない。ヴァントは自分はブルックナー演奏をするにあたって誰もいいお手本はなかった、楽譜を読み込んで全く一からブルックナー解釈を手探りで行ったと言っているが、それは言い過ぎではないか。少なくともここにアンドレーエの絶好の前例があることは、特筆しておきたい。アンドレーエの演奏は清冽で澱みがなく、的確である。気の向くままにテンポをいじったりしない、厳正な演奏である。その意味でヴァントの先駆け的感性にいたく心を打たれた。全曲一枚のCDに収まっているのもいいが、これもきりりとしたテンポのお陰だろう。このような名全集が09年まで埋もれていたとはもったいない話である。だが、この値段、何とかならないものだろうか。と思っていると、ドキュメント・レーベル等に買収されて激安で売られてしまうのか。ともかく、ブルックナー好きにはたまらない全集であることはまちがいない。
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