中古CD店でラジオで聞いたラフマニノフの祈りに近い前奏曲をアシュケナージのピアノ演奏で買う。
ラジオで聞いた前奏曲はレクイエム風の響きがあった。
ティーレマンのベートーヴェン交響曲全集はレコード芸術で若いのに巨匠の風格と評されていたが、中古なのに新品より高いので買うのを止める。
現在到着待ちのアレクサンダー・クレインのソングス・フロム・ザ・ゲットーはロシア未来派歌曲だが、曲目にある三つのゲットーからの歌というのが、昔友人がラジオでエアチェックしたクレインの三つのイディッシュ語の歌だとすると、時を越えて謎だった曲が手に入ることになる。エアチェックしたカセットを聞かせて貰ったが、浮遊感のある不思議な歌声だった。
このCDの試聴がタワーレコード・オンラインでできたので、聞いてみると確かにクレインの三つのイディッシュ語の歌に似た曲が何曲かある。
このCDの6割ぐらいがロシア未来派歌曲で4割がロシア未来派室内楽曲だと思われる。
不安定で危うい旋律が持ち味のクレインである。三つのイディッシュ語の歌以外にも室内楽でもその稀有の才能を発揮しているだろうと予測はつく。
このCD、プレミアがついて高くて買えなかったのだが、最近インターネットを見たら中古で廉価で販売していたので注文した。
クレイン一家はユダヤ音楽の収集家の家系で音楽家を家族に多く出した。ジュリアン・クレインもグレゴリー・クレインも知る人ぞ知るロシア未来派の音楽家である。未来派全盛期にユダヤ系の歌を採譜してアレンジして発表していたが、スターリン時代に入り、ロシア民族主義的な作品を求められるようになり、次第にユダヤ色を出しにくい環境になった。そんななかで歴史に埋もれて行ったクレイン一族であるが、ラジオの現代の音楽でクレインの三つのイディッシュ語の歌として放送され、そうして現在、ソングス・フロム・ザ・ゲットーとして世の音楽好きの注目の的となっているのだ。
早く音源を手に入れて聞き、ラジオで聞いたクレインの三つのイディッシュ語の歌と同一曲であることが確かめられれば、長い間の謎が解けて、ロシア未来派歌曲という希少な分野の記録を記憶に留めることができ、音楽史的価値が再評価できる。
東方の前衛たちの歌声が時代を越えてまさに今鳴る