友人に長い間探し求めていた音源、アレクサンダー・クレインのソングス・フロム・ザ・ゲットーを貸す。
ロシア未来派歌曲で友人がかつてエアチェックした曲、三つのイディッシュ語の歌が三つのゲットーからの歌という題名で入っている。
石の家で友人にCDを渡すと歌詞とピアノのメロディがカセットと同一だったとはどういうことだ、歌のメロディは同一じゃないのかと言っていた。
翌日メールが来て、昨夜全曲一気に聞きました、やはり例の曲がいちばん良いです、メロディも同じでした、時空を越えました、バイオリン曲より歌曲の方が良いです、貴重なものを探し当ててくれてありがとう、と書いてあった。これでクレインの謎も一件落着である。
先日近郊の町へ行き、フォカッチャ・サンドと珈琲セット600円を頼み、くつろぐ。パン屋さんでメアコーンブロートというパンを買い、茂蔵で竹の子煮とハンバーグを買い、スーパーでタンドリーチキンを買って帰る。
帰って大島保克の新譜を試聴するがたいへん良かった。このところ、フルトヴェングラー・ザ・レガシーのブラームスやベートーヴェンをよく聞く。そこで近所の図書館で吉田秀和の河出文庫フルトヴェングラーを借りて読む。吉田秀和はフルトヴェングラーの最晩年に仏・独でフルトヴェングラーの実演に接し、いたく感動したという。またバイロイトの第九を日付は違うが生で聞くという歴史的体験をしたという。
吉田秀和の言い方では、フルトヴェングラーの特徴は官能的なものと威厳とが分かちがたく結びついている所だという。
過去に吉田秀和の知っていたLPよりも遥かに多くの音源がフルトヴェングラー・ザ・レガシーに収録されている。吉田秀和の絶賛したトリスタンとイゾルデも一枚分入っている。ブラームスもシューマンも、
当時より入手が容易くなった。
でも私たちは吉田秀和ほど確かな手ごたえでこれらの音源を聞きこなしているか、と言えば心許ない。
延期続きのトスカニーニ箱を心待ちにしている私であるが、宝の持ち腐れにならないようこころして聞きたい。
今日読んだ音楽評の巨匠像時に切なく時に重たい