セルゲイ・パラジャーノフはグルジア出身のアルメニア人。
そのパラジャーノフの「ざくろの色」を久しぶりに見た。
驚異の映像である。
イコンに端を発した演劇的な構図、人形劇のような儀礼的な動き、民族衣装を用いた演劇的な美術、宗教的含意を有する一連の劇の進行、意味が有ったり無かったりする前衛的な映像美。
圧巻である。
民族音楽にリズムを乗せた先鋭的音楽が背後に流れる。民族的な文化に根差した映像によるイコンの詩である。
パラジャーノフは天才過ぎる。
魔術的リアリズムということばも一般化していなかった当時、見事にそれを形にしている。
日本で言えば、寺山修司の「田園に死す」や高嶺剛の「ウンタマギルー」に通じる、民俗に端を発した魔術的な映像詩の世界である。
世界的に見てもこのような完成度の高い映像詩は類い稀である。
絵画的様式美で言えばグルジアの「ピロスマニ」という映画がこれに比肩する。
グルジア人の美意識の高さは特筆に価する。
民俗的なものに根差した個性的な美意識の展開こそが再発見されるべき領域である。
私は「ざくろの色」に芸術に必要なすべての要素を見る。
絵画で言えばリトアニア出身のスタシス・エイドリゲヴィチウスに見られるような民俗に根差した新しいイコンの能動的創造力がセルゲイ・パラジャーノフには見られる。
ロシアのメイエルホリドやボガトゥイリョフの血を引く前衛の息吹がアジア的な民族色と宗教的含意を得て
活き活きと芽を吹いた。
そのような前衛の稀有な花に私は限りなく憧れる。
鮮やかにこの世に咲いた前衛美その底知れぬ富に見惚れる