全国各地の児童養護施設等に,タイガーマスクの伊達直人名で,たくさんの贈りものが届いているとのことです。贈りものは,はじめはランドセルでしたが,現金,図書券,商品券,文房具,お菓子,果物,おもちゃ等も贈られているようです。子どもたちに喜んでもらえるよう考えた上での贈りもののようですが,中には子ども向きではないものを贈られて,とまどった施設もあったようです。
今日のインターネットニュースによると,日本全国で同様なことが299件も起きているとのことです。贈り主は伊達直人の名前が大半ですが,その他に伊達直子,鉄人28号,星飛勇馬等さまざまなキャラクター名が使われているとのことです。中には,伊達直人と同じ直人という実名の青年が初めてもらったボーナスでランドセルを購入し児童福祉施設に届けたという出来事もあったようです。また,動物収容施設に伊達ニャオトという名前で,キャットフードを届けたというほほえましい例もあったようです。
『子どもが幸せな時は,みんなが幸せな時』 そう考える人は誰だってサンタクロースになれるわけですから,今回の贈り主たちは,伊達直人の名を借りたサンタクロースだったのではないかと思います。たくさんのサンタクロースが一気に出現したような感じがして,とても心が温かくなりました。施設の出身である伊達直人の心情に共感し,同じ境遇の子どもたちに贈りものを届ける心の内に,素直な善意を感じます。いろんな事情から親と一緒に暮らすことのできない,子どもたちの境遇に心を寄せ,少しでも子どもたちの喜ぶことをしてあげたい。そんな思いが,行動につながったのではないかと考えます。この思いが社会全体で共有されていくことで,親の虐待や育児放棄等子どもが被害者になる出来事や事件も少なくなってくれればと願います。
今回の現象は,たとえ一過性のものであっても,人間社会の中にある善意や温かさを,改めて多くの人が理解し信じることのできる機会になったのではないかと思います。
一方で,贈りものを受ける側の施設職員の方が,次のようなことを語っていました。
子どもたちには,多くの人に助けられ支えてもらっていることを感じてほしいと思っている。そして,そういう人たちにお礼をきちんと言えるように育てたい。しかし,匿名ではお礼を言えない。是非実名を明らかにし,子どもたちがお礼を言えるようにしてほしい。
全く同感です。感謝の思いをその人に直接伝えることはとても大切なことだと思います。ただ,匿名の中に込めた善意を汲み取り理解することも大切なのではないかと思います。
なぜ実名ではなく匿名で贈るのでしょうか。私は,贈りものに込めた思いをより率直に表すために,伊達直人の名前を借りたのではないかと思いました。だれが贈りものをしたのかではなく,どんな気持ちを込めて贈りものをしたのかを理解してもらおうと考えたからなのではないかなと思います。伊達直人の名前でランドセルが贈られたという出来事を知り,その意を汲み取った人たちが,連鎖反応で善意を形に表して行動するようになったのではないでしょうか。
子どもたちには,贈りものに込めた気持ちを受け止め,伊達直人というサンタの顔を想像することで 理解してもらうことになるのでしょうか。贈り主が目の前にいなくても,目の前にいる人同様に,感謝の気持ちを抱く子どもであってほしいと思います。
今回の出来事をとおして 願わくは,贈りものに込めた善意が,変わることなく社会に生き続け,具体的な行動や行為として表現される社会でありますように……弱い立場にいる人たちが,多くの人に支えられて生きているのだということが実感できる社会でありますように……すべての子どもたちが 幸せであることを実感できる社会でありますように ……