久しぶりに泣いた映画でした。涙の出る場面が何度もあったのは,「壬生義士伝」の映画以来でした。愛する者同士のお互いに相手を気遣い思いやる場面が多く,その場面を見るたび込み上げる思いがありました。
愛する人のために何ができるか。妻が大腸がんに冒されていることを知ってから,SF作家である夫は1日1編の物語を書き続けます。笑うことで免疫力が上がることもあるという主治医の話を聞き,妻が笑ってくれる話を毎日考えます。余命が1年余りという状況にありながら,1778日も元気で在り続けたのは,この物語に込めた夫の思いが通じたからだと思います。だからこそ,1778話である最終回の話を書くときの夫の慟哭が心に強く伝わってきます。自分自身も妻ある身ですから,夫としての妻への思いが切々と胸に響いてくるのです。
妻が夫に怒る場面があります。夫が高い薬代を賄うために苦手である恋愛小説を書こうしているのを知った時のことです。誰よりも夫の良き理解者であり一番の読み手であった妻にとって,自分のために苦手な分野の小説まで書こうとすることが許せなかったのです。夫は妻のために良かれと思い,妻は夫には夫らしい小説を書き続けてほしいと願うことで起こった対立。お互いがどんなに相手のことを想いやっているのかがわかり,涙が込み上げてきます。
妻が進行する病状を隠し,二人で北海道を旅する場面も感動的です。一本の木と背景の山々,そして頭上に広がるどこまでも青く澄んだ空。その海のような青い空を見上げる二人の姿が印象的です。二人にとっては,そのひとときがいつまでも続いてほしい永遠の時間だったのではないかと思いました。
主役の夫婦を演じた草彅剛と竹内結子がすごくいいですね。高校時代から幼馴染でお互いに心から信頼し愛し合っているカップルを演じるのにピッタリの配役だったと思います。
この映画の原作本である眉村卓氏の書いた「妻に捧げた1778話」をまだ読み終わっていないので,最後まで読み進めてみたいと思いました。きっとこの映画と同様の感動を覚えることと思います。