孤族の国の中でどう生きていったらいいのか。このことについて特集が組まれ,3人の方の考えが新聞に掲載されていました。その中の一人の考えに深く共感を覚えましたので,次に紹介します。
○ 中下大樹さん<僧侶,寺ネット・サンガ,葬送支援ネットワーク代表。これまで2000人以上の方の死にかかわり死に顔を見てきた。ホスピスに宗教者として勤め,数百人のみとりをしている。その後,ボランティアの葬送活動を始め,自殺・孤独死の現場にも数多く足を運ぶ>
死ぬ間際には,その人の生前のすべてが見えてしまう。…人は生きてきたように死んでいく。死という「点」ではなく,それまでの何十年の「線」を見ないといけない。死から生を見つめて,社会を変えていかなければならない必要性に気付いた。
…以前は日本人の多くが家で亡くなっていたが,今では死を病院に外注し,生々しい現場を見ずにやり過ごしている。 …生と死は合わせ鏡のようなもの。死を直視しないことで,生を真剣に考えない社会になってしまったのではないか。
…多死の時代を迎え,社会全体が死と向き合わなければならない時代になる。家族や親しい人が亡くなった時,その痛みを縁にしてつながることはできないか。…宗教が人々の悩みや孤独,悲しみにもう一度寄り添うことができないかと考えている。
◇さまざまな死を見つめ,みとってきた中下さんだからこそ,死から生をとらえなおすことの大切さを実感されたのではないかと感じました。死を直視することで見えてくるのは,生きることの尊さなのではないかと思います。
死はただの「点」で,生は何十年もの長い「線」。だからこそ生の大切さをしっかりとかみしめ,確かな実線として生きることで,死という最後の点を結ぶ。これを自分自身の生きる構えとしたいと思います。
同時に,身近で人が亡くなった時には,その死を悲しむ遺族の方の思いを真摯に汲み取りその心に寄り添うことのできる人間でありたいと思います。死を悼むことでつながる縁を大切にしていきたいものだと思います。