「いま,きみに いのちの詩を」と題する,詩人52人のメッセージ(詩)を集めた詩集(木内喜久夫:編,小学館発行)を読みました。ひとつひとつの言葉に立ち止まりながらその世界を味わうことのできる,いい詩がたくさんありました。中でも,次の詩はストンと心に落ちる詩でした。
小さな質問
高階杞一
すいーっ と 空から降りてきて
水辺の
草の
葉先に止まると
背筋をのばし
その子は
体ごと
神さまにきいた
なぜ ぼくはトンボなの?
神さまは
人間にはきこえない声で
その
トンボに言った
ここに今
君が必要だから
最後の神様の答えが,すべてを語っているように思いました。
「ここに今 君が必要だから」は,命あるものすべてにその存在の意味,生きることの意味を伝える答えなのではないかなと思いました。
孤族の世界で生きる意味を見失いかけている人も,この言葉を耳にすれば,生きる意味を確かめることができるのでは……。この詩を読むことで,この世界に在るすべてのもの(命あるものだけではなく)が,みんな必要とされてそこに存在しているということを,改めて考え再確認できるような気がします。
もし子どもたちとこの詩を読むとしたら,トンボの小さな質問と神様の答えを空欄にして提示し,子どもたちに質問の内容と神様の答えを考えさせたいなと思います。どんな質問とどんな答えが登場するでしょうか。その上で,この詩を読んでいくと,その子なりに詩の世界を想像豊かに読み味わうことができるのではないかと思います。
やっぱり,詩はいいですね。言葉を通して新たな世界が見えてきます。見失っているもの,大切なものを気付かせてくれます。