金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】株主総会の季節 企業のガバナンスの課題とは?

2019-06-26 07:11:24 | 金融マーケット

 株主総会が真っ盛りのシーズンです。N証券やリク××など、ガバナンス体制についての株主総会での判断が大きく報じられています。日本企業にとってのガバナンスの課題を、あらためて振り返ってみましょう。

 ここ30年の株価を見れば、日本企業の最大の課題は「成長力」であることは自明です。同じ時期のSP500が10倍以上に値上がりしているに対して、日経平均株価は▲30%と下落したままです。したがって、市場平均を下回る業績(ROE基準)を3~5年も続けている経営者には「退場宣告」を突き付ける議決権行使が一般化しつつあります。

 一方で、絶望的な状況から成長の源泉をみつけて、企業を再生していくことは難しく、これを実現するためには、少し暴力的なリーダシップを要する場合も珍しくありません。そして、このような強列なリーダーシップは一時的にマスコミの寵児となり持てはやされますが、こうした強権体制が長く続いていくと、かなりの確度で不祥事の温床になることも我々は学んできました。静岡の老舗地方銀行、都内の某信用金庫、さらにはN自動車の例を挙げるまでもありません。

 さて、成長力を激しく徹底的に競い合うには、戦国時代の武将のように、下克上は当たり前、裏切りや節操のない行動を是認する世界を前提にしないといけません。一方で、不祥事を撲滅していくためには、江戸時代の武家組織のように、個人の欲や、義に反することを否定し、確固たる秩序を前面に押し出していかねばなりません。相反するエネルギーを同時に制御しようとしているのが、現在のガバナンス議論であります。

 要諦は「バランス」にあるのですが、勢いが足りないと戦国時代へ、また不祥事が続くと江戸時代へ、舵を大きく左右に振っているのが日本の現実。現在行われている株主総会での議論を見るにつけ、世論が求める方向性は毎年大きく揺らいでいることが分かります。難しいテーマですが、デモクラシーの発展にはノブレスオブリュージュの存在が不可欠だったように、企業ガバナンスのノブレスオブリュージュとして、機関投資家の果たすべき責任は大きく、そして待ったなしの状況と言えると思います。(続く)


 

 


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