日本企業のガバナンスのテーマは、成長を追いかけることと不祥事を撲滅すること、この相反するエネルギーの適正バランスを保つことにありますが、これを実現するのは機関投資家がブレずに責任を果たす必要があります。
機関投資家とは、企業年金の基金や公的年金の基金、あるいは投資運用会社、生命保険会社、銀行などの金融機関等を指します。彼らの果たすべき責任をまとめたものがスチュワードシップコードに他なりませんが、公的年金や投資顧問会社は、ここ数年の変革の中で、スチュワードシップ責任を果たすべき存在として、その覚悟と運営体制を固めつつあります。日本を変えよう、世界を変えようという意気込みが伝わってくる運用会社も出現し始めています。
しかし、依然として旧態のまま、過去のスタイルを変えようとしない存在も残っています。生命保険会社や銀行がプロパーとして保有している政策投資株式です。生命保険会社からすれば、顧客から預かった保険料を負債とする資金で買っている株式ですし、銀行も顧客から預かっている預金を負債にしていますから、「プロパー財産」などと表するのは適当ではないと思いますが、彼らは、こうした株式を購入することで効率の良い業績をあげて保険加入顧客や預金顧客へ利益を還元するのが目的だと主張、これらの株式については「会社提案賛成」「株主提案反対」という方針を貫いています。
その実態は、株式を保有することで、株式発行会社に対して優位な立場を作り、その地位を活用して金融取引を強要する目的に他なりません。本来こうした行為は違法でありますが、発行会社側も買収防衛の意味があり、その実態を公に認めることがないため、放置されているのが現状。事実、最大手の生命保険会社にとっては、株式保有によるパワーセールスこそが、法人取引のビジネスモデルの中核であるため、この議決権行使の内容の開示を、頑として拒否し続けていました。金融当局の指導や世論の動きもあって、ようやく今年から開示するようですが、どの程度の開示レベルかはまだ不明です。
次のターゲットは、メガバンクをはじめ銀行の政策投資株式でしょう。この議決権行使内容の開示も時間の問題だと考えています。