駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医療から無駄を省く

2009年08月25日 | 医療
 商品販売経営の知識に欠けるので売り上げに対してどの程度の宣伝費が妥当なのか詳しくない。当然費用対効果を考えて宣伝していると思うのだが、仕事で接する製薬メーカのやり方にはかなり疑問を持っている。
 医者は何とかして効能の優れた薬を選んで使いたいと願っているのだが、同一系統薬剤では、どの薬が優れているかはっきりしたデータがない。僅かな違いはあっても優劣は付けがたいのだ。そのため、熾烈な販売競争が展開され、製薬メーカーのMR(営業)は高級な総天然色高級紙のパンフレットを何種類も持参する。ところがその半分以上が読まれないで捨てられているのが現実だ。一瞥で捨てられるのを含めれば、9割近いと思う、本当に勿体ない。
 なぜ捨てられるのか、それは書いてある内容が客観的な部分は何時でもどこでも入手可能な薬剤情報であり、宣伝の部分は自社製品の優越性を喧伝しているばかりだからだ。
 いつもご馳走になっているのに問題にして申し訳ないが、薬品メーカー主催の勉強会は華美に過ぎる。一流ホテルで豪華なバイキング料理付き、場合によっては講師だけでなく受講者の足代宿泊代さえ支払っている。勿論、それで印刷、ホテルやタクシー業界は潤うのだろうが、単純な町医者はその資金を削って薬を安くできないものかと思う。三十年前に比べればかなり質素?!になったので、もっと規制をすれば、華美な宣伝は抑えられるはずだ。勿論それには受ける側(医師)の感覚を是正する必要もあるのだが。
 もっと重大なことはこの問題の根幹に関わる薬価(薬の値段)決定の機構にメスを入れることだ。これは厚生省が主導で決めているのだが、そのメカニズムは霞の中で不明だ。もっと有体に言えば薬に限らず医療費全体が官の統制下にある。勿論、官が単独で決めるわけではなく業界との折衝があるわけだが、闇とは言わなくても濃い霞の中で決められている。此処を叩けば莫大な無駄が省ける。無駄という言い方は語弊があり、それによって潤っている人々が居るわけだから既得権の打破という発想の転換を図ることと言い換えよう。
 政権交代のもたらす効果は既得権益の打破にある。既得権は5年から10年でその資格があるかを洗い直す必要があり、権利を持つ者は常にどれだけ社会に貢献したかを問われなければならない。昔はこんなことを言うと仲間のはずの医師会員に睨まれたが、今なら大丈夫だろう。私は町医者の診療費を5%削っても今のレベルの診療を保つことは十分出来ると考えている。
コメント
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