駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

梅雨らしい日

2014年06月11日 | 自然

                

 昨日からどんよりとした天気で小雨が降ったりやんだりしている。気温は二十四、五度で暑くはないのだが、湿度が高く梅雨らしい陽気だ。この辺りの患者さんは入梅に入りましたと言われる。馬から落ちて落馬したように響くので、当初は違和感があったが、今は慣れ「ああ、そうですね」とお答えしている。患者さん達と同様に私も梅雨が好きなわけではないのだが、しとしと降る雨や道路の水溜りに不思議な懐かしい落ち着きを感じる。

 今の子供達はほとんど畦道というものを知らないだろう。濃い緑に降りかかる雨を見ていると、田植えの終わった滑りやすい畦道を水の張られた田に広がる無数の波紋を見ながら歩いた記憶がよみがえる。

 幼い日の自然の記憶が、どのような意味を持つのかよくわからないが、何気なく感ずる季節感からよみがえる野山や小川の記憶を持っているのを幸運に感ずる。時代というものなのだろうが、片時も携帯を手放さず忙しく指を動かしている若い人達を見ていると一体どうなってゆくのだろうと見ることのない次世代を思い遣ることもある。

 先日衛星放送で、台湾の学生が審議を尽くさづ中国寄りの政策を強行しようとする政権に対し、それは民主主義にもとると抗議をして国会を占拠する様子を放映していた。今の日本の学生にはそんな若さに溢れた正義感はなく、政治を自らの生に係わるものとする感性は乏しいようだ。

 伝統を紡ぎ、新たな術を生み出す力を持つ者が生き延びてゆけるだろう。そうした生命力は賢しらに与えられるものではないと思う。

コメント
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