文は人なりと言うが、絵も人なりだろうか?。私は自分が油絵を描くせいか、日本画よりも油彩画の方が好みなのだが、東山魁夷の絵は好きで、何回か展覧会を見に行ったことがある。不思議に心落ち着き、良いものを見たという気分になる。外連味がなく篤実な気配を感じる。受けを狙ったというと失礼な言い方かもしれないが、人気の日本画家の中にはいかにもという感じの絵を描かれる人も居られた。外連味はまたそれなりに面白く味わいがあると思うのだが、俗臭があっては私の趣味ではない。
先日、どこかの出版社の小冊子を読んでいたら、東山魁夷氏のことが出ていた。何かでたまたま知り合いになったところ、巨匠といった素振りのない誠実な方で丁寧に長くお付き合いしていただき感激したと書かれていた。おそらく、知り合いになられた方に何か光るものがあったのだろうが、きっと画伯はそうしたお人柄だったのだろうと思った。
作品と人物にどのような関係があるかは微妙なところで、天才的な作品を書く人には狂気が宿っていそうな気がするが、そう簡単なものでもなさそうだ。勿論、無関係ということはないけれども、そこに直結した連関があるとは限らない。狂気は平凡な人の中にも潜んでおり、天才に見える人の中にも俗は隠れていそうだ。
当然ながら見る側の内容も関わってくるわけで、作品の鑑賞は奥深い。