世界は広いと頭では知っていても実感としてあるいは確かな知識として理解している人は少ない。別に重力でなくても電波でなくても、人間の関心は距離に反比例して小さく弱くなる。だから意識して自覚して見直さないと事実や真実には近づけない。
そして落とし穴は等距離でも同じように情報が伝わるとは限らないことだ。ちょっと急だったのだが朋遠方より来たると一週間前に連絡があった。それでは落ち着いて夕食でもと料亭、といっても十軒くらいしかない、に予約の電話を入れると何処も満員漸く八軒目の馴染みでないところに空きが見つかった。一応料亭とか和食と名乗っている店ばかりで決してお安くないのに、この盛況ぶりは何だと不思議な気がした。世の中景気がもう一つのようでひょっとしたら良いのかもしれない。私の医院は一寸町外れで二十年前は校内暴力で荒れた場所のせいか富裕層は希、そのせいか景気が良いという患者さんは少ない。ただ、消費税の駆け込み需要がある業種には薄日が差しているらしい。
つまり世の中は斑で、自分の肌身で知りうる範囲の情報では、事実とずれてしまうことも多い。要注意なのは、自分の限られた情報だけで俺が正しいと押し通す人物が少なくないことだ。
敵より恐い馬鹿大将、病気より恐い井の蛙医者。