前作「コルシア書店の仲間たち」がよかったので、文春文庫から出てる「ヴェネツィアの宿」も読んでみました。
コルシア・・・は作者がイタリアに住んでた1960年代に知り合った人たちについて書かれてたお話しだったが、今回は作者自身の経験した話が多い。
特に家族について。
裕福なインテリの家に生まれた作者。
父は30歳で一人ヨーロッパを豪遊旅行した経験を持つ。
母はそんな父に一生をささげつつ、あげくに父は愛人が居て家を出てってしまう。父が入院する病院で愛人と対面する作者。→「ヴェネツィアの宿」
とても美しいヨーロッパの文章を書く人だけど、こんな経験もしてるんだなぁとしみじみ思います。
戦争が始まり、疎開する母と子供たち。→「夏の終わり」疎開先の叔父の家の生活。これがまた古きよき立派なおうちで、この家の描写が懐かしくも今の日本にはない世界であって、すごく面白いです。家のつくりとか、庭とか、人々の生活とか。
1900年代前半ですね。
昔の日本が、日本人はこうだったんだなぁと。
そしてカトリック系の作者が入るミッションスクールのシスター達。→「寄宿学校」
これもまた一味違った世界です。宗教がある学校。独特の雰囲気で、まるで物語みたい。
ほんとに須賀さんのエッセイは面白いです。
なんかはまってしまいました。
他にもヨーロッパに渡った後、パリで出会う寮の生徒たち。→「カラが咲く庭」
初めてルームメイトのありがたさを教えてくれたドイツ人の友人との出会いと30年後の再会。→「カティアが歩いた道」
聖地まで徒歩で歩く学生たちの巡礼→「大聖堂まで」
どれもこれもが切なくて、キリリと胸に来るような話ばかりです。みんなどこか寂しくて悲しくて、でも一生懸命生きてるような人ばかり。作者の母も父親も夫も友人もみんな。
あまりに文章がきれいで、イタリアやパリの色々な地名が出てきて、そこに行きたくなります。ロンドンのエジンバラのパリの街の風景が目に浮かぶよう。
一番印象に残ったのは、まだこの時代に一人の若い女性がヨーロッパへ留学するというのはとても珍しかったということ。
あるフランス人修道女と言い合いになる作者。
「フランス人は個人主義過ぎる」というフランス人に、
「あなたはフランス人だからそういえるんだ」と言う作者。
「私たち(日本は)まず個人主義から見極めないと」という。
この時代の日本には個人主義とかそういうものがまだなかったんでしょう。
そんな風にちらほら昔の日本のあり方が出てくるから面白い。
○ヴェネツィアの宿 須賀敦子 文春文庫
コルシア・・・は作者がイタリアに住んでた1960年代に知り合った人たちについて書かれてたお話しだったが、今回は作者自身の経験した話が多い。
特に家族について。
裕福なインテリの家に生まれた作者。
父は30歳で一人ヨーロッパを豪遊旅行した経験を持つ。
母はそんな父に一生をささげつつ、あげくに父は愛人が居て家を出てってしまう。父が入院する病院で愛人と対面する作者。→「ヴェネツィアの宿」
とても美しいヨーロッパの文章を書く人だけど、こんな経験もしてるんだなぁとしみじみ思います。
戦争が始まり、疎開する母と子供たち。→「夏の終わり」疎開先の叔父の家の生活。これがまた古きよき立派なおうちで、この家の描写が懐かしくも今の日本にはない世界であって、すごく面白いです。家のつくりとか、庭とか、人々の生活とか。
1900年代前半ですね。
昔の日本が、日本人はこうだったんだなぁと。
そしてカトリック系の作者が入るミッションスクールのシスター達。→「寄宿学校」
これもまた一味違った世界です。宗教がある学校。独特の雰囲気で、まるで物語みたい。
ほんとに須賀さんのエッセイは面白いです。
なんかはまってしまいました。
他にもヨーロッパに渡った後、パリで出会う寮の生徒たち。→「カラが咲く庭」
初めてルームメイトのありがたさを教えてくれたドイツ人の友人との出会いと30年後の再会。→「カティアが歩いた道」
聖地まで徒歩で歩く学生たちの巡礼→「大聖堂まで」
どれもこれもが切なくて、キリリと胸に来るような話ばかりです。みんなどこか寂しくて悲しくて、でも一生懸命生きてるような人ばかり。作者の母も父親も夫も友人もみんな。
あまりに文章がきれいで、イタリアやパリの色々な地名が出てきて、そこに行きたくなります。ロンドンのエジンバラのパリの街の風景が目に浮かぶよう。
一番印象に残ったのは、まだこの時代に一人の若い女性がヨーロッパへ留学するというのはとても珍しかったということ。
あるフランス人修道女と言い合いになる作者。
「フランス人は個人主義過ぎる」というフランス人に、
「あなたはフランス人だからそういえるんだ」と言う作者。
「私たち(日本は)まず個人主義から見極めないと」という。
この時代の日本には個人主義とかそういうものがまだなかったんでしょう。
そんな風にちらほら昔の日本のあり方が出てくるから面白い。
○ヴェネツィアの宿 須賀敦子 文春文庫