DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

なぜ、はっけん号と淡探を購入するのか?

2013-03-21 09:33:39 | ButsuButsu
4月より、実験調査船はっけん号と自律型潜水ロボット淡探の購入のために基金を立ち上げる予定です。

その前に、はっけん号を建造した経緯について2001年にまとめた文章があるので紹介します。



********************

はっけん号は、琵琶湖研究所の実験調査船である。



実験調査船というのは、船内で簡単な実験ができるからそう呼ぶことにした。

こんな呼び方は、世界に例がないだろう。

琵琶湖研究所の造語である。

さて、はっけん号について話す前に、その建造の経緯について触れよう。

というのは、1993年3月にはっけん号が進水して以来約8年の歳月が流れ、昔の記憶が薄れてきているからである。

大切な思い出をなくさないために、こうして文章の形として残しておきたい。

1982年に琵琶湖研究所はスタートしたが、湖沼の研究を行なっているにもかかわらず観測船がなかった。

そのために、漁船を借り上げて調査をするのだが、夏の暑さ冬の寒さは身にこたえた。

時には、全身びしょぬれになって琵琶湖を漂流したこともあった。

まさに遭難寸前だった。

なんとかして、自前の調査船を持ちたい。

研究所の会議で話したら、吉良竜夫前琵琶湖研究所長に、「時期尚早だ」と言われてしまった。

1985年のことだったと思う。

悔しくてならなかった。

湖に出ない人は、琵琶湖の厳しさを知らないのだ。

負けたくなかったので、翌年の予算時期にも同じ話を持ち出した。

当時の琵琶湖研究所次長だった林さんが助け舟を出してくれた。

湖国21世紀ビジョンの、重要施策の中に盛り込もう、と。

単に船が欲しいと書いても駄目なので、出来るだけ夢のある話にした。

レイクシャトル10年計画の誕生である。

研究所の同意を取り付け、県庁へ持ち込んだ。

その頃、琵琶湖研究所は企画部企画調整課に属していた。

徹夜で作ったレイクシャトル10年計画は、当時の企画調整課長の桃野さん(故人)にいとも簡単につき返された。

でもめげなかった。

翌年、再挑戦をしたが、また、だめだった。

3年目の、1998年に、桃野さんが言った。

「熊谷さん、本気なんやな」。

そして、調査費をつけてもらった。

それから東京の某大手シンクタンクに頼み込んで、格安で実験調査船に関する調査をしてもらった。

1989年日本国内の聞き取り調査、1990年にカナダ・アメリカの国外調査を行なった。

初めて、カナダ内水面研究センター、ウッズホール海洋研究所、スクリプス海洋研究所を訪問した。

いずれも、琵琶湖研究所の何10倍もある、大きくて立派な研究所だった。

その当時の最先端の計測機器や調査船についての情報を得ただけでなく、研究マネージメントの仕方についても教わった。

行く先々で親切に教えてもらったことが今でも私の糧となっている。

だから、時々研究所にやってくる外国人に対しては、出来るだけ時間を取って親身に対応してあげるように心がけている。

その年に、オーストラリアからインバーガー教授という有名な陸水物理学者がやってきた。

教授のスーツケースの中には、見たこともない機器が入っていた。

水中の微細な水温構造を計測する機械だった。

台風が通り過ぎた翌日、教授と私は琵琶湖へ出かけて、その機器を水中に投入した。

データを見ていた教授が叫んだ。

「Great! Micho」。

それは、台風で引き起こされた内部ケルビン波の美しく大きな躍動だった。

それ以来、教授は琵琶湖の内部波に見せられてしまった。

そして、琵琶湖で国際的な共同実験をやろうと言い出した。

Noと言えなかった私は、事情もよくわからないまま教授と約束の乾杯をしてしまった。

教授は言った。

「You can do anything if you really want to do.」

それから、私の黒髪は徐々に白くなり始めた。

ちなみに、Michoというのは私のMichioという名前が、縮まったものでありイタリア語で大きな猫と言う意味だそうである。

共同実験の予算を取るために、科学技術庁の地域流動研究に応募した。

研究代表者は、吉良前所長だった。

吉良先生は、さすがに偉大だった。

初めての応募で通ってしまった。

こうして、3年間の琵琶湖における共同研究がスタートした。

この中には、3年目に琵琶湖国際共同観測(BITEX)をやることを盛り込んだ。

1991年、いよいよレイクシャトル10年計画がスタートした。

当時の企画部長が、カタカナは駄目だというので湖中探査先端技術化計画をいう名前に変わってしまったが。

10年前の県庁は、そんな雰囲気だった。

今では、マザーレークと大々的にカタカナで宣伝しているのに。

1992年、BITEXの予備調査を行なった。

少しずつ国内外から参加者も増えてきた。

中でも、京都大学の中西教授、近畿大学の津田教授(故人)、島根大学の橋谷教授の参加は大きかった。

海外からは、カナダのロバーツ、ビンセント、ルジャンドル、アメリカのメラック、マッキンタイヤー、イスラエルのバーマン、スペインのカタランなどなど、今でも親しくお付き合いをしている一線級の研究者が集まってきた。

1993年3月、待ちに待った実験調査船はっけん号の誕生である。

8月のBITEXに合わせて完成した双胴船は、世界最高の機能を有していた。

当時では画期的なDGPS、ADCP、F-PROBEと言った横文字がならぶ最新機器と、私が自分で図面を引いた実験室。

誇らしげにまっさらの舵を取る河内船長。

すべてが、まばゆいくらいに輝いていた。

8月中旬から約1ヶ月間、国内外の研究者・技術者・学生177名が参加した国際共同観測が始まった。

はっけん号は、早朝から夕刻まで連日稼動した。

みなが、一生懸命、採水しデータをとり解析を行なった。

NHK大津の稲垣ディレクターが、つきっきりで制作してくれた番組、近畿NHKスペシャル「世界が琵琶湖を診断した」は、今でもファンがいるほどの名作だった。

研究成果は、日本陸水学会誌から特別号として出版された。

あれから、8年が経った。

今でも、はっけん号は現役で活躍している。

河内船長も、健在だ。

2000年に、琵琶湖研究所は建設省と共同で自律型潜水ロボット「淡探」を作った。

環境監視の自律型水中ロボットとしては、世界初のものである。



今、私達は、このロボットを利用して琵琶湖の未知の部分を解明しようとしている。

そして、ゆくゆくはバーチャル琵琶湖を作り、その中にロボットがとったいろいろな映像やデータをはめ込んでいく予定である。

バーチャル琵琶湖は、家庭のパソコンでインターネットを通してアクセスすることが出来る。

学校や、お茶の間から簡単に琵琶湖とふれあい、もっと、琵琶湖のことを知って欲しいと思っている。

それが、はっけん号と淡探と私達の願いである。

時代は、どんどん変わっている。

わずか10年前には知りえなかった多くのことを私たちは解明してきた。

パソコンやインターネット、携帯電話の普及はもっと進んできている。

15年前に、世界一の調査船と琵琶湖潜水艦を作ろうと思い立った誇大妄想的な夢が、ほぼ実現してしまった。

今、私たちが考えていることは、この夢から可能になった技術を用いて、琵琶湖の本当の姿を一人でも多くの人にお見せしたいと言うことである。

そして、できたら、琵琶湖とその周辺に暮らす人々のすばらしさを世界に紹介したいと思っている。
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3月20日(水)のつぶやき

2013-03-21 05:04:05 | 物語
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研究リーダーのあり方

2013-03-20 17:57:36 | ButsuButsu
古い文章を整理していたら、10年前に書いた文章を見つけた。

ずいぶんと青臭い意見だが、それなりに気負いもあった。

今、多くの若者が挫折していく中で、このような書生っぽい文章も役に立つことがあるのだろう。

参考までに掲載する。




*******************

研究者は、原則的に個人主義である。

独自性がなければ研究という職業を続けることは困難である。

なぜなら、常に研究成果としてオリジナリティが要求されるからである。

個人主義であることが、オリジナルな発想を維持できる手段でもある。

個人主義者は、自分のことに口を挟まれることを極端に嫌がるから他人のことにも口をはさまない。

無干渉を好むのである。

そういった、扱いが困難な専門家の集まりを束ねて上手にコーディネートすることが研究リーダーの役割である。

達成しなければならない目標があって、それが個人の技能に著しく依存しない場合は号令だけで仕事ははかどるだろう。

一般的な業務では、そうした形で仕事が進められていくことが多い。

しかしながら、研究には明確な目標がない。

成果という漠然とした目標はあるかもしれないが、明確な目的地があるわけでもないし道順を示すガイドブックがあるわけでもない。

研究という職業は、地図を持たないで山に登るようなものである。

その山にしても、標高がわかっているわけでもない。

頼りになるのは、自分の体力と判断力と経験を生かしながら進んでいくので、自分で自分に責任を持つしかないのである。

だから、研究グループといっても、全員の意見が一致しているわけでもない。

琵琶湖の場合、それは水質であったり生態系であったりする。

文字で書くのは簡単だが、それらを説明することは非常に困難を伴う。

このような漠然とした水質や生態系を保全するのだが、具体的な達成目標は個人によって異なる。

環境問題一般に言えることだが、望ましい環境というのは一人一人によって微妙に異なる。

皆が同じ意見なら個性のない世界になってしまう。

だから、研究者が個性を保つことを否定するわけにはいかない。

創造的な仕事をする研究者が個性的であることが、将来の科学に対する保険だからである。

複雑で多様化する環境問題の中で人類が生き延びていくためには、多様な考え方、多様な生態系といったリスク分散が不可欠なのである。

かつてそのようなことがあったように、仮に現段階では誤りだろうと思うことでも、10年先には常識になっているかもしれない。

そういう意味で、研究のリーダーは難しい舵取りをしなければならない。

牛を水のみ場まで連れていっても、水を飲んでくれるかどうかわからない。

飲みたい気持ちにさせることが大切である。

本人の意識が高まらなければ、成果は何一つ期待できないからである。

最小努力の最大成果というのが資本主義社会の鉄則であるとするならば、研究では最大努力の最大効果を求めつづけなければならないことがたいへんな点であり、やりがいのある点でもある。

研究のリーダーとして、共同研究に参加する研究員と適度な距離を置いて、適度にエールを送りながら限られた人員と経費の中で最大限の研究成果が上がるように努めなければならない。

だんだんと予測が難しい時代になってきている。

それだけ社会そのものの変動が大きく、あわせて人間の考え方も多様化してきている。

その中で、硬直化した考え方を押し付けることがとても困難なものとなってきている。

また、環境の激変に対する予測もできないことから、柔軟で多様な考え方を許容するリーダーシップが求められているのだと思われる。
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3月19日(火)のつぶやき

2013-03-20 04:57:53 | 物語
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チベット紀行-9

2013-03-20 00:10:00 | ButsuButsu
5月8日

9時15分 朝食に桃がでた。とてもおいしかった。

11時20分 出発

11時40分 給油。

車がエンストする。

これで20回目だ。

15時35分

UV=5580μW/cm2、標高3534m

17時00分 巴松錯(八松錯ともいう)に到着。

標高3531m。



       気温     降水量
   上旬  中旬 下旬 上旬 中旬 下旬
1月  0.1 -0.1 9,5 0.2 0.6 0.8
2月 0.9 2.5 3.2 1.1 1.4 1.9
3月 4.2 5.2 6.2 2.5 5.5 9.0
4月 7.2 8.4 9.0 13.2 15.6 16.2
5月 10.3 10.3 11.6 21.1 22.6 22.7
6月 12.7 14.0 14.6 33.9 39.3 51.3
7月 15.6 15.4 15.6 45.2 46.5 40.6
8月 15.5 15.4 15.1 34.9 32.6 40.4
9月 14.6 13.3 12.5 29.1 45.6 36.0
10月 11.6 9.8 7.7 20.6 13.8 ?
11月 5.1 4.8 3.7 3.5 0.8 ?
12月 2.4 1.2 0.4 0.5 0.5 ?

この気象データを見て興味深いのは、3000m以上なのに冬季でもあまり気温が下がらないことと、年間の降水量が5000mmを超えている点だ。

18時00分 湖の調査に行くが、機器(CTD)の調子が悪いので引き返した。

明日、早朝に挑戦することにした。



宿舎に行く。



今日の晩御飯はごちそうだ。

レストランのメニューを見ると豪華だ。

ただ、かなり高い。

1.蔵猪肉炖薨(?) 150元 (チベットブタか?)
2.巴松魚    80元

3.青炖蔵鳩  150元 (ハトか?)
4.青釦菌焼  50元 (キノコか?)
5.涼拌蕨菜  40元 (山菜か?)
6.素炒野小茴 40元
7.松茸焼  200元 (マツタケか?)
8.炒蔵鳩蚕  30元

当時1元が15円くらいだったので、松茸は3000円くらいになる。

ここはチベットの高級保養地なので特に値段が高いのかもしれない。



食後にCTDの電池を交換し、再検定した。回復したので一安心。
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Goodbye, Mr. Ura_Tama

2013-03-19 17:43:56 | ButsuButsu
Goodbye, Mr. Chips という映画がある。

1939年および1969年に上映されている。

原作は英国の作家James Hiltonである。

ミュージカルにもなったが、その中に

"You smile, I smile, that was the beginning of love." というフレーズがあったように記憶している。

以心伝心といやつなのだろうか。

昨日、東京大学生産技術研究所の浦環先生の退官講演があった。

わが国の自律型水中ロボット(AUV)開発の草分け的な研究者である。

琵琶湖で活躍している「淡探」の設計者でもある。

私が先生に初めてお会いしたのが、1996年の頃だったと思う。

今は亡き中山英一郎先生のご紹介だった。

当時私は、琵琶湖で潜水艦を作ろうと本気で思っていた。

何としても湖底にもぐりたかった。

神戸にある三菱重工に建造中の潜水艦を見学に行ったこともあった。

そんな私に、自律型水中ロボットを作るように指導していただいたのが浦先生だった。

潜水艦の維持管理経費に頭を悩ませていた私は、この話に飛びついた。

そして2年間の協議の上に誕生したのが「淡探(タンタン)」だった。

2000年3月のことである。



その後、世界では数多くのAUVが製造された。

しかし、12年間も現役で淡探を動かし続けることができたのも浦先生の賜物だと思っている。

退官講演の中で、浦先生は「理解しあうことの大切さ」を強調されていた。

ちょうど、Mr. Chipsのセリフではないが、必要なことを分かり合うのに多くの言葉は必要としない。

今、やり続けなければばらないことがあるのならば、それを完成させるために己の全生命をつぎ込むことは人間としての本望だろう。

Thank you, Mr. Ura-Tama, and goodbye.

Next curtain will be opened soon.

尊敬と感謝をこめて。

熊谷 拝
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チベット紀行-8

2013-03-19 10:56:36 | 物語
5月7日

7時00分 起床。標高2735m。

7時20分 朝食、今日もおかゆだ。

9時00分 出発

11時00分 崖くずれがあり解放軍がでて道の修理を行っていた。

12時15分 標高1958m。

車がエンストし始める。

この辺から標高が下がってくる。

突然緑の多い谷間にでる。



西に向かう帕隆蔵布は通麦(タンメ)を過ぎたあたりで西から流れてくる大河川と合流し、南へと向かう。

大屈曲点と呼ばれる場所である。

雅魯蔵布江(ヤルンツァンポ)という大河川である。

東西から来た河川はここで合流して南行し、ヒマラヤ山脈を貫いてブラフマプトラ河となりインドからバングラディシュへと流れる。

この河の年総流出量は1395億トンにも達する。

実に琵琶湖の5杯分である。

これは、雨季にインドやバングラディシュから吹き込む季節風が大量の雨をもたらすからで、年降水量が4000mmから4500mmに達する。

中国で最も降水量が多い地域である。

このことによって樹木が多く茂り、木材の供給地になっている。



14時20分 昼食



15時00分 出発

坂道の登りで再びエンスト。

3574m。

セルモーターが回らない。

仕方ないので車がバックで下がりながらエンジンをかける。

17時45分 運転手がガソリンの買いに行く。

18時30分 帰ってきた。

19時22分 4573mの峠にさしかかった。

一面、10cmくらいの雪に覆われている。

21時15分 林芝(リンチ―)ホテル

標高3020m。

夕食に回族料理を食べた。
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3月18日(月)のつぶやき

2013-03-19 04:51:45 | 物語
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チベット紀行-7

2013-03-18 09:09:48 | ButsuButsu
5月6日 快晴

7時00分 朝食、今日はおかゆだ。

7時45分 出発

周辺に聳えるのは喜馬拉雅山脈である。

9時48分 峠を越える。標高4393m。

10時30分 然烏(ランウー)着

UV=1699μW/cm2、標高3924m。

然烏錯(湖)の調査を行う。



堰せき湖である。

表面積22平方キロメートル。

貯水量8.8億トン。

最大水深50m。

13時15分 UV=7080μW/cm2、標高3937m。

13時40分 出発

16時10分 舗装道路が続く。

美しい樹林帯にかかってきた。

16時30分 波蜜に到着

夕食には火鍋を食べた。

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3月17日(日)のつぶやき

2013-03-18 04:40:35 | 物語
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水中ロボット

2013-03-18 01:07:14 | ButsuButsu
水中で作業を行うロボットを水中ロボットという。

これには大まかに分けて2種類ある。

有索ロボット(RTVまたはROV)と自律型ロボット(AUV)である。

空中ではこれ以外にラジコンロボットというのがあるが、水中では電波が届かないのでこれはない。

時々これらを混乱する人があるので気をつけて欲しい。

それぞれにメリット・デメリットがある。

(1)有策ロボット

文字通り、ケーブルがついていて、船上で操作を行う。

19700年代頃から開発されており、世界にはさまざまな機種がある。

きわめてスタンダードな水中ロボットである。



ケーブルを通して電気を送れるので明るい映像を得ることが出来る。

ただケーブルの長さ以上に移動できないこと、人間が操作するので客観性が少ないこと、ケーブルによって場が乱されること、対象物の数値化が困難であることなどのデメリットがある。

したがって特定に作業を行うにはよいが、学術的な用途は少ない。

(2)自律型ロボット

海洋を含めて、多くの研究者が期待しているにがケーブルなしで自律的に動くロボットである。

1990年代頃から実用化され始めた。

価格も、有索ロボットの10倍から100倍する。

それは、ハードだけではなく、ソフトの開発も必要だからである。

電源を内蔵しなければならないので、重量が重くなるという欠点がある。

淡探は2000年に建造されたが、重さが200kgくらいある。

ただ最近は30kg程度のものが出来ている。

このロボットは、事前に設定されたミッションしたがって水中で作業を行う。

完全にコンピュター制御なので、客観性があり、対象物を数値化するのに適している。

またケーブルがないので、自由に水中を航行することが出来る。



ただ運用に人手がかかるのと、詳細な情報は回収後でないと入手できないというデメリットがある。

したがって仕事の用途によってこれらの水中ロボットを使い分けることになる。

水中での作業は、空中の10倍以上困難である。

無線が届かないので超音波を使うことになるが、散乱が大きいので送れる情報量に限界がある。

アシモに見られるように今後は自律型ロボットの開発が盛んになると思われるが、水圧が大きな水中での作業も同じであろう。

だからこそ世界で始めて湖底からのベントを発見した自律型水中ロボット淡探を守ってゆきたいと考えている。

そのことを世界の人々が期待している。
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地球温暖化による湖沼環境の変化と生態系への影響

2013-03-17 17:30:13 | ButsuButsu
1.気候変動から地球温暖化、そして地球過熱化へ

20世紀の初めまで、地球の気温はどんどん低くなっており寒冷化に向かっていた。ところが、1906年頃から急に気温が上昇しはじめた(図1)。この当時、多くの研究者は、このような地球規模での気象変化のことを気候変動(Climate change)とよんでおり、さほど大きな関心を払ってはいなかった。ところが、コンベヤーベルトとして知られる海洋大循環理論を提唱したWallance S. Broeckerが、「気候変動:人類は顕著な地球温暖化に直面しているのか」という論文をScienceに発表し、初めて地球温暖化(Global warming)という表現を用いた(Broecker 1975)。



Broeckerは、この論文の中で「このまま人類が排気ガスを出し続けるなら、十年以内に寒冷化はストップして二酸化炭素の増加による顕著な温暖化が始まるだろう。一旦そうなると、大気中の二酸化炭素濃度は急激に上昇し、21世紀のはじめには過去1000年間で経験したことのない気温になるだろう」と述べた。

実際、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた第4次報告書(2007年)によると、1906年から2005年の気温上昇幅は0.74℃で、第3次報告書(2001年)において予測した0.6℃より高い数値となっている。特に、1956年から2005年の気温上昇は大きく、1906年から2005年の上昇率の2倍になった。過去20年間の気温変動および海水面の上昇は、ともに予測値の上限を推移している。

このようにして、地球温暖化は気候変動より強い表現として、人類に対する警告の意味で用いられるようになった。さらに、ガイア仮説という本を書いたJames Lovelockのように、地球過熱化(Global heating)ということばを使う人も現れてきた(Lovelock 1979, 2008)。彼は、二酸化炭素が500ppmを越えると気温が急激に6℃上昇し、その後二酸化炭素が増えても減っても気温は変化しないことを、単純なモデルを使って示した(Lovelock 1994)。ちなみに現在のハワイにおける二酸化炭素濃度は370ppm前後である。

気温上昇の原因については様々な説があるが、いずれにしても、過去100年間に気候変動から地球温暖化そして地球過熱化へと気温上昇は加速されているのは事実である。IPCCが予測しているように、21世紀の終わりまでに平均気温が2℃から5℃上昇すれば、どのようなことが起こるのだろうか。特に、湖沼への影響について考えてみたいと思う。

2.長い時間軸でみた地球の気候変動

Lovelock(2007)はロンドン王立協会での講演の中で、次のように述べている。今から5500万年前、始新世(Eocene:約5580万年前~3390万年前)の初めには地球上の大気に2テラトン(2兆トン)の二酸化炭素が放出されたと言われている。原因としては、底層水温の上昇、海底の地すべり、マグマの貫入による海底のメタンハイドレードの分解によるメタンガスの増加や(メタンハイドレード仮説、Dickens et al. 1995)、火成活動の活発化による温室効果の影響(Owen and Rea 1985)などがあげられている。これによって温帯から寒帯にかけて約8℃気温が上昇し、熱帯における気温上昇は約5℃であった。そして生物生産や海洋湧昇が元のレベルに戻るのに20万年の歳月を必要とした(ただし松岡ほか(2006)によると、生物生産や海洋湧昇が回復するのに10万年程度かかるが、炭素同位体比が元のレベルに戻るのに20万年以上かかるようである)。一方、20世紀から21世紀にかけて、始新世のほぼ半分にあたる1テラトンの二酸化炭素が大気中に放出されている。両者の違いは、5500万年前には約1万年かけて徐々に放出された二酸化炭素が、現在ではわずか200年でこの数値に達したことである。このような短い時間内での変化が、特に地球上の水圏生態系に与える影響は大きい。なぜなら、陸上生物に比較して、水中の多くの生物(特に貝類)は環境変化に適応するのに時間がかかるからである。

 また、5500万年前の太陽は0.5%ほど温度が低かった(Sagan and Mullen 1972)。そして、この時代には農業はおこなわれていなかったので、自然植生が人為的な制約なしに気候に適合することができた。さらに、現在の大気にはエアロゾルが含まれており太陽光を反射したり雲によって吸収したりしているので、気温を2℃から3℃を下げる役割を果たしている。大気からの除去速度は、エアロゾルで数週間なのに対して二酸化炭素は50年から100年かかるので、急激に化石燃料の燃焼を抑制すると逆に気温上昇を招く可能性を指摘している。一方で、現在の急激な気温上昇は、地球上の動植物が好適に生存する環境を消失させ、2050年までに15%から37%の生物が絶滅する可能性もある(Thomas et al., 2004)。

次に、琵琶湖の時間スケールについて考えてみよう。地球上に人類が誕生した約500万年前に、伊賀上野付近に古琵琶湖が形成されてから、現在の位置に移動してきたのが約40万年前と言われている。この40万年前の超間氷期やその後の3度の間氷期という温暖な気候、そして4度の大きな氷期を経験してきた(図2)。このような自然環境の変化は、今も湖底の地層に記録されている。現在も地球は氷期にあり、その中でも比較的気候が穏やかな間氷期にあると言われている(Kawamura et al. 2003)。最後に起こったヴェルム氷期が終わった後、気温が3℃から4℃上昇し、いわゆる縄文海進と呼ばれる時代が訪れた。実際、現在の地球の気温は、縄文海進の頃の最高気温より0.5℃ほど低いという報告がある。



 氷期から縄文海進にかけて、北ヨーロッパや北米にあった氷床が融け、海水面が140mも上昇したと言われている。もし、IPCCの予測のように、今後気温上昇が続き、南極にある氷河がすべて溶ければ海面は65メートル上昇し、グリーンランドの氷河がすべて溶ければ海面は7メートル上昇するとも言われている。合わせると72m海面が上昇するわけだが、本当にこれくらい上昇するのだろうか。

 実際には、海水面が上昇するとハイドロアイソスタシーという地殻のバランスで、地球内部のマントル移動が起こり陸地も上昇するので、もっと低い海面上昇にとどまると予想されている。ただ、地球内部の応答には時間がかかるので、一時的な水位上昇は避けられないものと思われる。あと気温が0.5℃上昇すると、縄文海進の頃より高い気温となり、さらに2℃上昇すると、過去40万年でもっとも高い気温となる。IPCCの報告どおりなら、21世紀中にこの記録が破られる可能性は高い。

3.地球温暖化による湖沼環境の変化

2007年の9月、北極海の氷は1950年代から1970年代にかけて同じ時期に観測された面積の約50%のサイズになった(Stroeve and Serreze 2008)。2008年にも同様な傾向が観測されたが、極域における夏季の海氷の減少は、地球温暖化の影響を象徴的に示すものとして注目される。あと数十年で、北極海は夏になると海氷がほぼ融解し通常の船が航行できるようになると考えられている(Wang and Overland 2009)。

北極海の海氷面積の偏差(1978年から2000年の平均値からの偏差)を図3に示す。マイナスは海氷が減少していることを示している。2002年頃から偏差は大きくマイナスにシフトしはじめ、特に2007年以降は大きいことがわかる(Lovelock 2007)。北極海におけるこのような変化は、内陸における水資源にも広い範囲で表れている。北半球の湖沼や河川では、結氷日数がどんどん減少しており、生物の変化とも関連付けられている(Magnuson et al. 2000; Quayle et al. 2002)。重要なことは、湖沼や貯水池は広く地球全体に点在する生態系のネットワークであり、陸域生態系と水圏生態系が気候変動に対して応答する際のパターンやメカニズムを知る上での重要な手がかりを与えてくれることである。その意味で、湖沼や貯水池は、気候変動の有効な監視機能、統合機能、調整機能の役割を果たしている(Williamson et al. 2009)。



たとえば、モンゴル最大の淡水湖であるフブスグル湖では、気温の上昇に伴って周辺の氷河や永久凍土が溶解し、年間に1cmほど水位が上昇している(Kumagai et al. 2006)。ヒマラヤの氷河地帯でも同様な現象が起こっている(伏見 2006)。氷河や永久凍土の氷が完全に溶けた後、水の供給を失った湖は蒸発によって面積が縮小し、やがて塩湖化していく。チベットやモンゴルにはそのような湖が多くあり現在も増えている。

アフリカにあるタンガニーカ湖の研究を行っていたCatherine O’Reillyは、地球温暖化が湖の生物生産を減少させているという論文をNatureに発表した(O’Reilly, 2003)。この論文の中で、温暖化に伴って水温成層が強くなったことと、湖上風速の低下が湖の上下混合を弱めたことによって、深水層から表水層への栄養塩供給が減少し、表水層での植物プランクトンの増殖が低下し漁獲量が減ったということを示した。

一方で、スイスとフランスの国境にあるレマン湖や鹿児島県の池田湖では、湖の上下混合が不十分になり浅い層から深い層へ十分な酸素が供給されなくなった(長谷川 2006、新井2009)。これらの湖では、1960年から1970年代にかけての急激な富栄養化によって植物プランクトンが増え、多くの有機物が沈降して湖底にたまっている。このようにして湖底にたまった有機物はバクテリアによって分解されるが、そのときに水中の溶存酸素が消費される。酸素供給の低下と有機物の分解とで、湖底付近はやがて低酸素化してくる。現在、レマン湖も池田湖も、一年中、溶存酸素濃度がゼロに近い状態である。このよう低酸素化は、カスピ海、日本海、インド洋、カリブ海のような大きな海水域でも報告されている(たとえば、Diaz 2001)。

 また、世界の淡水湖沼の20%の容積を占めるバイカル湖(ロシア)やアメリカのワシントン湖では、湖が水温成層する期間が少しずつ長くなってきている(Shimaraev 2006, Winder and Schindler, 2004)。これも温暖化の影響と言えよう。北米にある五大湖のエリー湖では、全体の30%に近い水域で低酸素化が起こっている。外来の貝が大発生したことと、水温上昇が原因だと言われている(Hawley et al. 2006)。このように溶存酸素が少なくなり生物が生存しにくくなった水域をデッド・ゾーン(死の水域)と呼んでおり、図4に見られるようにデッドゾーンが世界中で急速に拡大している(Diaz and Rosenberg 2008)。



4.湖沼生態系への影響

湖沼生態系の構造と機能は、時空間的に変化する気候や人間活動、生物形態、集水域特性などの複雑な相互作用によって制御されている(Schindler 2001)。このように複雑な過程の中から湖沼に及ぼす気候変動の影響を明らかにするために、Leavitt et al. (2009)は、古陸水学的なアプローチに基づいたプロセス指向型の陸水学的研究統合を行った。このことによって、気候変動が、時空間的に広がりを持つ湖沼の構造と機能を以下の四つの経路を通して制御していることを示した。それらは、(1)放射や熱、風による湖水面への迅速かつ直接的なエネルギー輸送、(2)地球活動の変化を通したゆっくりとした間接的なエネルギーの影響とそれに付随した湖沼への物質輸送、(3)大気からの雨や、粒子、溶液としての直接的な物質流入、(4)集水域からの水や懸濁物質、溶存物質の間接的な流入、である。湖沼生態系は、これらのエネルギーと物質の流入に対して敏感に反応している。

 槻木と占部(2009)は、琵琶湖の湖底堆積物中に含まれる動物プランクトンを分析し、カブトミジンコの遺骸と休眠卵のフラックスの変化を示した(図5)。これによると、カブトミジンコの遺骸フラックスは1950年後半から増え始め、1970年代後半にピークとなった後、今日までほぼ同じ水準を保っている。一方、休眠卵のフラックスは、1950年代後半から増え始めるが、1980年代になると急速に減少し、1985年頃よりほとんど見られなくなった。このような変化から、近年の温暖化による冬季の鉛直循環の弱まりがカブトミジンコの餌環境を好転させ、浮遊越冬を可能にしたと考察している。



 Hsieh et al. (2010)は、1962年から2003年にかけて採取された琵琶湖の植物プランクトンの長期データを解析し、1980年代中頃を境に、淡水赤潮に代表される富栄養化による植物プランクトンの異常増殖から、温暖化による安定水塊に対応した植物プランクトンへと移行したことを示した。このことはTsugeki et al. (2009)の研究結果とよく合っている。

 このように、湖の水温上昇や鉛直循環の弱体化は、さまざまな影響を湖沼生態系に及ぼす。たとえば、貧栄養湖であるアメリカのタホ湖では、水温の上昇に伴って暖水性の外来種であるブラックバスやブルーギルが増えてきており、これに反比例するように在来の魚種が減少してきている(Kamerath et al. 2008)。また琵琶湖では、2007年の鉛直循環の弱体化により湖底の溶存酸素濃度が減少し、デッドゾーンの形成と底生性生物の斃死が報告されている(熊谷2008)。これらは、地球温暖化に伴う熱エネルギーの変化が、湖沼生態系に影響を与え始めていることを示す事例である。

5.平衡状態から非平衡状態へのシフト

湖沼の研究を長くやっていると、いろいろなことが見えてくる。それらはまるでジグソーパズルを解くような形で、一つ一つのピースがはめ込まれていく。自然という、非常に大きな枠の中でパズルを完成させることは不可能に近いけれども、気長に対峙してプレイすることが大切だと思う。

最近、面白い論文を目にした。琵琶湖博物館の敷地に掘られた900mのボーリングコアの中の温度が徐々に上昇しているそうである。穴を掘った当初の1993年には深さ25m付近で16.5℃あった温度が2003年には17.5℃になった。これは穴の上に建物を建てたので気温が一定に保たれるようになった結果だと説明してあった(Goto et al. 2005)。空気が動きにくくなって気温が一定になると、地中の温度が上昇する。地温が気温と平衡状態になれば安定するのだろうが、熱のやり取りというしくみとしては車の空冷エンジンと同じだろう。

 地球温暖化が進んで大規模な循環がストップし、湖底や海底の水が動かなくなったら同じような現象が起こるのだろうか。湖水や海水による地熱の水冷機能がストップすると、水と堆積物の熱的平衡状態が壊れ非平衡状態へ移っていくと思われる。堆積物中の熱フラックスの大きさにもよるが、熱帯で発生するような低気圧が水の底にも生じるのだろうか(ハイドロサーマルプルーム、Serra et al. 2005)。そうだとすると、熱的エネルギーの不安定により直接的な物質輸送が起こり、水圏生態系に大きな影響を与えることになる。このことは、エネルギーと物質輸送にかかわる大気と地球の相互作用の新しい経路の発現と言えるのかもしれない。


参考文献

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チベット紀行-6

2013-03-17 12:23:32 | 旅行
さて、いよいよ本格的なチベット探訪となる。

今日は、5月5日、晴れのち曇り

7時30分 朝食。頭が痛い。しかし熱が下がったので大分楽になった。

8時00分 出発。UV=3020μW/cm2、標高3948m。富士山より高い。

出発早々に車がエンストする。

9時15分 再出発。

11時10分 休憩。UV=1800μW/cm2、標高2828m。

14時30分 峠に着く。周辺には雪が残っていた。標高5100m。



こんな高い峠があってよいのだろうか。

15時10分 左貢(ゾゴン)に着く。標高3794m。

ここはチベット独立運動が盛んな場所だ。



15時20分 給油と遅い昼食。UV=2540μW/cm2、標高3870m。

16時15分 出発。途中で峠を越える。標高4500m。



21時50分 給油。3245m。

22時10分 八宿(バースー)着。夕食に餃子が出た。3267m。今日はここで泊まる。
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3月16日(土)のつぶやき

2013-03-17 04:37:39 | 物語
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琵琶湖の環境と災害

2013-03-16 16:11:12 | ButsuButsu
▼地球温暖化の影響による琵琶湖の酸欠状態

琵琶湖は今、大きな問題を抱えている。最深部は104メートルあるが、湖底近くの水中溶存酸素濃度が低下傾向にある。2008年12月中旬に測定したところ、2ppm(ppmは100万分の1)。生物が生息する限界であり、これを下回ると魚は死んでしまう。2007年12月には、水深90㍍の地点でハゼ科の固有種イサザが約2キロメートルにわたって約2000匹余り死んでいた。原因は酸欠であると思われる。



琵琶湖への酸素供給は、そのほとんどが大気中から行われる。冬期の寒さで湖面や湖岸・河川が冷やされ、酸素を豊富に含んだ表層の水が重たくなり湖底に降下する。それによって、深層の水が上昇し、水の入れ替わり「全循環」が起こる。これまでは冬場に表層と深層の水が混ざり合って酸素が全体に行き渡り、健全な状態が保たれてきた。しかし最近、地球温暖化による暖冬の影響で十分に循環がなされず、部分的に酸素が足りない状態が続いている。湖の中の自浄作用、自己回復力が働かなくなったのである。

▼琵琶湖の水量は日本の湖沼全体の34パーセント

琵琶湖は400万年前には現在の位置よりも南にあったとされる。「古琵琶湖」である。滋賀県は、太平洋側から上がってくるプレートと日本海側から上がってくるプレートがちょうど交わるところに位置し、地殻変動が激しい。今から約40万年前、太平洋側のプレートが上がってきて、現在の形になったという。プレートどうしがぶつかるところには活断層が形成される。花折断層や琵琶湖の西岸と東岸にそれぞれ断層があり、現在も1年間に1~2ミリメートル沈みながら北の方角に進んでいると言われている。



琵琶湖の水は約275億トンある。日本の淡水の湖沼全体で約800億トンだから、全体のほぼ34パーセントを占める。面積は東京都23区より少し大きい。最深部104メートル、標高85メートル。海面よりも20メートルほど深く、深いところの水は入れ替わりにくい。南湖の瀬田川と隣接する京都に浄水を供給する疏水2本、宇治発電所のバイパス1本が湖水の出口である。湖全体の水が交換されるには約16年かかるとされる。そのため湖底が汚染されると修復が容易ではない。

▼1987年をさかいに琵琶湖の水が変質

高度成長期以降、琵琶湖の周辺には企業や人が激増し、琵琶湖に対する環境負荷が大きくなった。1950年代後半からアンモニア濃度が上昇。おもな原因はし尿や肥料だ。1970年代後半からはリン濃度が上り、富栄養化が始まる。1977年、赤潮発生。武村正義知事(当時)が富栄養化防止条例(石けん条例)を制定施行したのは1980年である。1983年、富栄養化が進んだ状態を示すアオコが、南湖で発生。1994年には北湖でも発生した。1990年代からは大腸菌が増え始める。

富栄養化やリン、アンモニア濃度は1980代、行政の政策などにより徐々に改善されていったが、1987年ころをさかいに琵琶湖の水が変質し従来と違う様相を呈してきた。地球温暖化の影響である。1988年から湖の水温が上昇し始め、今日にまで至っている。また、湖のなかの泥、湖底泥の状態が悪化しており嫌気化や軟泥化が進んでいる。

▼琵琶湖の環境悪化から社会のあり方を考える

地球全体は氷期に向かいつつあると言われているが、過去の温度の推移を見ると、1900年初頭から急激に上昇し始めていることがわかる。これは産業革命以降の人間社会の生産消費活動の結果であると推測できる。多量のCO2排出はそのおもな原因のひとつである。

産業革命がもたらした大きな変化は化石燃料の使用だ。石油や石炭などの化石燃料は植物が太陽エネルギーを固定し、みずからのからだを作ってきた残骸である。長い時間をかけて地中に堆積されたそれらを私たちは掘り起こして使用しているのだから、過去の貯金を食い潰しているようなものである。そして埋蔵量には限界がある。

人間社会は現在、有史以来最大の人口を抱えている。大量死を招く戦争回避の努力や医療技術の発達など人命尊重を前提とした社会システムが構築され、また、科学技術の発達を背景にしてエネルギーの使用量が激増している。地球温暖化の根本問題は、人間が生活し生産消費することで生み出された余分なエネルギーが地球環境に負荷をかけているということにある。これはかつて人間社会に飢饉などをもたらした太陽系の中で起こる自然現象ではない。ここが決定的な点である。では、どうしたらよいか。まずは現状を知ることだろう。将来どのような社会を構築していくべきか、根本的な議論をする時期がきているのである。

▼あらたな課題

2009年に琵琶湖の湖底から泥水の吹き出しがあり話題となっている。同時に、湖底近くの濁度も上昇してきている。これらは何を意味しているんだろうか。最新の研究によると、この吹き出しは琵琶湖が縮小してきているのと対応しており、しかも年々拡大してきている。このような地殻の運動は、プレートの動きと対応している。最も懸念されるのは、このような急激な地殻の動きが温暖化と関連がある場合である。気温が1℃上昇すると、地球の周長は40m膨張すると言われている。なんだと思うかもしれないが、周長が40m伸びるということは、地球の半径が6m膨らむことに対応している。大きな値である。7000万年前にプレートの動きが活発化し、アンデス山脈ができたのもこのことが原因であるという論文もある。もしそうだとするならば、地球温暖化が進めば、琵琶湖はさらに縮小し湖底からの吹き出しももっと拡大することになる。このことは、琵琶湖全体の水質や生態系を大きく変えることとなり、おそらく全く異なった状況が出現することになるだろう。今でも、深い場所での水の上下運動が少しずつ変わってきている。つまり、湖底近くで局所的な対流が発生してきている。環境問題と地殻活動が融合したスケールの大きな課題であるが、冗談として放置するわけにもいかないのではないだろうか。いずれにしても注意深い観察が必要だろう。



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淡探とはっけん号を購入して琵琶湖の調査を継続するためのカンパを募集していますが、送金については今しばらくお待ちください。まだ事務局の準備ができていないので。4月に入ったら大々的にカンパを募集します。一口1000円です。
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