現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

宮川健郎「「箱舟」からの自立 ― いぬいとみこ『木かげの家の小人たち』をめぐって」

2017-10-22 14:06:07 | 参考文献
 1959年に出版され、佐藤さとるの「誰も知らない小さな国」とともに「現代児童文学」のスタートを飾ったといわれるいぬいとみこの「木かげの家の小人たち」について述べています。
 題名から作品論なのかと思われたのですが、話は「ファンタジーとは何か」から始まって、かなり広い分野について考察しています。
 著者は、この作品において、満州事変、日華事変をへて太平洋戦争にいたる日本の近代を「洪水」と呼び、主人公たちが小人たちをかくまっていた小部屋を「箱舟」と呼んでいます。
 これらの比喩と、主人公や若い世代の小人たちが「箱舟」から自立するのがこの物語のテーマであると考えるのは、非常に自然な読みだと思います。
 ただ、この「箱舟」の比喩を、「アンネの日記」やリヒターの「あのころフリードリヒがいた」などの海外の戦争児童文学に広げて考えたり、子ども時代一般が親の庇護下という一種の「箱舟」であるとするのは、やや論理に飛躍があってついていけませんでした(それぞれに独立した作品を、著者の都合のいい部分だけを切り出してまとめて見せている印象が強いです)。
 また、話が次第に「木かげの家の小人たち」から離れてしまい、著者が引用している先行論文(長谷川潮や上野瞭)からあまり深まらなかったのも残念でした。

現代児童文学の語るもの (NHKブックス)
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日本放送出版協会
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渡辺 和重「児童書総合目録活用術 」日本児童文学の流れ所収

2017-10-22 14:04:00 | 参考文献
「児童書総合目録の概要を説明し、NDL-OPACと児童書総合目録を比較しながら、児童書を検索する際のポイントを説明します。」という趣旨で、児童書の検索のやり方を主な受講者である図書館の司書たちに伝授していますが、児童書総合目録は一般にも開放されているので児童文学研究者にももちろん有益な情報です。
 児童書総合目録は、国際子ども図書館、国立国会図書館のほか、日本国内で児童書を所蔵する主要類縁機関である大阪府立国際児童文学館、神奈川県立神奈川近代文学館、三康文化研究所附属三康図書館、東京都立多摩図書館、日本近代文学館、梅花女子大図書館、白百合女子大学の7機関が所蔵する児童書・児童書関連書の所蔵情報を一元的に検索できる目録です。
 また、児童書の専門書誌として受賞情報や解題情報(あらすじ)などもあわせて提供しています。

国際子ども図書館児童文学連続講座講義録 (平成17年度)
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国立国会図書館国際子ども図書館

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