現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

庄野潤三「ケリーズ島」庄野潤三全集第四巻所収

2018-07-02 09:28:53 | 参考文献
 この短編も、ロックフェラー財団によってアメリカのガンビアという田舎町にあるケニオン大学に一年間派遣されていた時のことを描いています。
 作者の代表作のひとつである「ガンビア滞在記」と同じタッチで描かれていますが、老数学者のニコデム教授の夫人にケリー湖にある島へ連れて行ってもらった時のものです。
 ガンビア滞在記と同様に単なる紀行文にとどまっていないのは、戦争体験を経てポーランドからアメリカへ逃れてきたニコデム夫人に対する深い理解と共感があるからだと思えます。

庄野潤三全集〈第4巻〉 (1973年)
クリエーター情報なし
講談社
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朽木祥「石の記憶」八月の光所収

2018-07-02 08:00:10 | 作品論
 被爆体験を扱った連作短編集の二編目です。
 銀行へ行った母は強い閃光を浴びて消えてしまい、その影だけが石段に残っています。
 この逸話も、すでに何度か聞いたり見たりした記憶があります。
 それを新たに作品化する意義は、どこにあるのでしょうか。
 確かに二次創作として、このことを知らない若い読者に知らせることには一定の意味はあるでしょう。
 また、被爆体験を風化させずに伝えていくことも必要なことでしょう。
 しかし、新しい戦争児童文学を書くなら、このような情緒的な書き方でない新しい創作方法を考える必要があるように思われます。
 福島第一原発事故を経験した後では、核兵器や放射能汚染が過去のものではなく、現在も存在することをもっと叙事的に描いていかないと、それらをまねいた根本的な原因を取りこぼすことになるのではないでしょうか。

八月の光
クリエーター情報なし
偕成社
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