現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

イタロ・カルヴィーノ「雨と木の葉」マルコヴァルドさんの四季所収

2018-07-10 16:57:53 | 作品論
 いつも会社で単調な仕事をさせられているマルコヴァルドさんには、普段はあまり楽しいことはありません。
 しかし、ひょんなことから、枯れかかった会社の植木に雨がかかるようにすることに、生きがいを見出すようになります。
 マルコヴァルドさんは、植木をバイクの後ろに載せて、町中を雨を求めて走り回ります。
 植木はバオバブの木で、マルコヴァルドさんの期待に応えてグングン成長し、やがて葉の色を黄金色に変えて、町中に黄金の葉を散らします。
 黄金の葉を求めて、マルコヴァルドさんの後を追う人々の群れ。
 そして、最後の一葉が散って上空高く舞い上がるラストシーン。
 なんと美しい一遍でしょう。
 いつもは皮肉や風刺を描いている作者の本質は、このような世界を描ける詩心だったのです。

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店
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よしもとばなな「鬼っ子」さきちゃんたちの夜所収

2018-07-10 08:20:01 | 参考文献
 宮崎の青島で一人で死んだおばさんの家の後始末に行くさきちゃんが描かれています。
 兄弟や親戚と縁を切って遠くへ行って、一人で古井戸の精霊(?)を鎮めるために素焼きの子鬼を作り続けたおばさんの生き方や芸術に対する考え方に、おばさん同様に親戚の中で少し変わっていると見られているさきちゃんは、強く共感します。
 こういったスピリチュアルな世界は、よしもとの読者の若い女性は大好きなのですが、「幽霊を信じない」さきちゃんを配することで巧みにバランスを取っているので、リアリストの私でも読み味は悪くありません。
 子鬼そっくりのおばさんの家の裏の黒木さんの存在も含めて、合理性や効率性を求めすぎる現代へのアンチテーゼの働きをしています。
 また、文章が軽快できらきらとしていて、読み心地がいいことも付け加えたいと思います。

さきちゃんたちの夜
クリエーター情報なし
新潮社
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