現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

池澤夏樹「ヤー・チャイカ」

2020-11-28 14:10:26 | 参考文献

 「スティル・ライフ」(その記事を参照してください)が芥川賞を受賞して、1988年2月に単行本化された時に、その抱き合わせで掲載された作品です。

 技術系の会社員とその娘の高校生の二人暮らしの様子を縦軸に、彼に接近してきた怪しいロシア人(KGB?ソ連崩壊前の話です)との交流を横軸にして話が進みます。

 淡々とした語り口は安定していますが、小説としての出来栄えは今ひとつです。

 特に、所々に挿入されている、娘が草食恐竜を飼うという妄想(?)部分が、全体に有機的な効果を発揮していません。

 

 

 

 

 

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池澤夏樹「スティル・ライフ」

2020-11-28 13:57:38 | 参考文献

 1987年に中央公論新人賞を受賞し、翌年芥川賞も受賞した短編です。
 英語の表題を直訳すると「静物画」ですが、作品の内容を見ると「静かな生活」とでも訳すべきでしょうか。
 同名の大江健三郎の小説(その記事を参照してください)もありますが、この作品では、パソコンを使った株取引でお金を稼いで、人とは交わらず、家財も持たずに、各地を転々として暮らしている奇妙な友人との同居生活(主人公も株取引を手伝います)を描いています。
 男性同士の同居生活といっても、巨大な住居(主人公の叔父の持ち家です)で、今の言葉で言えばソーシャル・ディスタンスを十分すぎるくらい保った、同性愛的要素はまったくない関係です。
 というよりは、異性愛も含めて、性的には全く漂白された生活が描かれています。
 他の記事にも書きましたが、私自身はソリタリー気質なので、こうした生活には常に憧れがあり、現在はそれに近い生活をしていますが、妻や子どもたちやごく親しい友人との関係は保っています。
 それに対して、この作品で描かれている世界は、あまりに淡白で無機質な感じを受けてしまい、どこかに破綻を予感させる危うさを秘めています。
 作者はその後も安定した文学活動(創作だけでなく)を続けていますので、作者自身の生活は、おそらくこれとはかなり違ったものなのでしょう。


 

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