「スティル・ライフ」(その記事を参照してください)が芥川賞を受賞して、1988年2月に単行本化された時に、その抱き合わせで掲載された作品です。
技術系の会社員とその娘の高校生の二人暮らしの様子を縦軸に、彼に接近してきた怪しいロシア人(KGB?ソ連崩壊前の話です)との交流を横軸にして話が進みます。
淡々とした語り口は安定していますが、小説としての出来栄えは今ひとつです。
特に、所々に挿入されている、娘が草食恐竜を飼うという妄想(?)部分が、全体に有機的な効果を発揮していません。
「スティル・ライフ」(その記事を参照してください)が芥川賞を受賞して、1988年2月に単行本化された時に、その抱き合わせで掲載された作品です。
技術系の会社員とその娘の高校生の二人暮らしの様子を縦軸に、彼に接近してきた怪しいロシア人(KGB?ソ連崩壊前の話です)との交流を横軸にして話が進みます。
淡々とした語り口は安定していますが、小説としての出来栄えは今ひとつです。
特に、所々に挿入されている、娘が草食恐竜を飼うという妄想(?)部分が、全体に有機的な効果を発揮していません。
1987年に中央公論新人賞を受賞し、翌年芥川賞も受賞した短編です。
英語の表題を直訳すると「静物画」ですが、作品の内容を見ると「静かな生活」とでも訳すべきでしょうか。
同名の大江健三郎の小説(その記事を参照してください)もありますが、この作品では、パソコンを使った株取引でお金を稼いで、人とは交わらず、家財も持たずに、各地を転々として暮らしている奇妙な友人との同居生活(主人公も株取引を手伝います)を描いています。
男性同士の同居生活といっても、巨大な住居(主人公の叔父の持ち家です)で、今の言葉で言えばソーシャル・ディスタンスを十分すぎるくらい保った、同性愛的要素はまったくない関係です。
というよりは、異性愛も含めて、性的には全く漂白された生活が描かれています。
他の記事にも書きましたが、私自身はソリタリー気質なので、こうした生活には常に憧れがあり、現在はそれに近い生活をしていますが、妻や子どもたちやごく親しい友人との関係は保っています。
それに対して、この作品で描かれている世界は、あまりに淡白で無機質な感じを受けてしまい、どこかに破綻を予感させる危うさを秘めています。
作者はその後も安定した文学活動(創作だけでなく)を続けていますので、作者自身の生活は、おそらくこれとはかなり違ったものなのでしょう。