1989年に出版されたいわゆる「ボブ・グリーン」物のうちの一冊です。
このころ、作者は日本で非常に人気があったので、彼がすでに出版している本だけでなく、新聞に発表されたコラムそのものを訳して、雑誌などに載せることがありました。
この本もそんな一冊で、訳者は出典を明確にしていませんが、シカゴ・トリビューン紙に発表されたコラムから選んで訳し、「週間プレイボーイ」誌に連載されたコラムのうち、1987年から1988年にかけて発表された45本のようです。
作者自身が選択に関わっていないこともあり、内容は玉石混交(なにしろ、毎日のようにコラムを書いているので、すべてが傑作とはいきません)で、どうやら日本人に受けそうなコラムを選んだようです。
そういった意味で、内容について評価しづらいのですが、ひとつ気になったのは、作者が彼のコラムの持つ影響力を意識して、それを使って個人や事柄に影響を及ぼすようなコラムが増えてきたことです。
こうなると、対象の人たちは、一記者に対するのではなく、有名人「ボブ・グリーン」に対するようになってしまいます。そうすると、コラムの内容の信憑性や中立性に疑義が湧いてきます。
椎名誠や沢木耕太郎に関する記事でも書きましたが、ここにもいわゆる有名人の無残があるようです。
三人に共通するのは、若くして成功し有名になり、それゆえに有名人であることに毒されて、書くものの内容が堕落していったことです。
三人とも大好きな作家だっただけに、残念な気持ちでいっぱいです。