「季刊芸術」昭和43年冬季号に掲載されて、短編集「小えびの群れ」に収められた短編です。
この作品の構成は、以下の通りです。
1 尺取虫をめぐる家族のやり取り。
2 小学校六年生の下の息子である良二の友達の宇田くんの話。
3 ムラサキシキブをめぐる家族のやり取りと、良二のともだちの話。
この時期になると、作者の家族小説のスタイルは確立されて、家族とその周辺(この作品の場合は良二の友達)に関する日々の出来事から構成されるようになっています。
フィクション性はほとんど失われて、限りなくエッセイに近づいているかもしれません。
しいて小説としての文学性をあげるとしたら、題材の組み合わせの妙や作者の滋味あふれる文章ぐらいです。