現実の重み
日本全国から焙煎講座にお越しに見える方々の中で、ここで習得したような焙煎が出来ない方がいます。残念ながら、その現場まで行くことは出来ませんので、電話でのやりとりに終始しますが、まず、目の前の現実をよく考えれば良いわけです。
当店の「プロパン」ではガス圧は2.8まで上がる。多くの「都市ガス」は2.0迄が多いとすれば、その制御の目盛り範囲は2.8:2.0と大きく(幅で4割)違いますから、「ダンパーを半絞り」云々抜かされておられる方には非常に厳しい現実が目の前にあるわけです。
そんな微妙なダンパー操作しても、火力でブレブレですね。
この差を埋めるものは残念ながら無い。
ここで大きく話題を逸らします。もうこの日本でも「蒸らし」なんていう方はほとんどいなくなりました。これは幽霊と同じで、誰も「蒸れた」状態を見たことがないから当然の帰結です。また、ハリオV60で「ネルドリップ」の味が出るという記事を鵜吞みにする前に、自ら検証として本物のネルドリップを実際に行うべきなのは、基本中の基本であります。一方だけで答えを出している人が多いです。
SCAAでも推薦しています。だけどアメリカで一体だれだけの方が、店でV60を使っているのでしょうか?
要は柔軟なスタンスを取り、どんな球にも対応出来る精神があれば、何が本当であるかは自然と理解出来る筈です。
「ダンパー」は単なる空調資材でしかありません。一般の部材名です。筒の中でバタフライで流れる量を制御するのですが、これで味が変われば、こんな安い投資はありません。私もダンパーを電動にして電子制御させるでしょう。しかーし、 これでタンザニアをマンデリンに変えることは絶対に不可能です。何にも変えることは出来きないのです。
ハンドピックするような駄豆は多少変化するかもしれません。原付50ccを改造するようなものですが、所詮、90ccの敵にはなりません。
より良い商品をお客様に届けたいなら、最初の材料(生豆)を吟味をしない限り、何を言おうと、
チャンチャラ可笑しいのです。
現実を見ることです。
一度でも「蒸れた」写真を見てみたいものです。
この珈琲焙煎の分野に常識というものがあるとするなら、私はそれが私達が営む普通の生活の中でも立派に通じるものであって欲しい。
「ダンパー」で味が変わるメカニズムを教示してほしい。そう思いませんか?
「1」 これが一般的なダンパーです。あなたは本当にこれを焙煎機に付けただけでコーヒーの味が変わると思いますか?何か心に引っかかりませんか?
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「2」 お風呂に毎日一定時間内に水を張るとします。これで例えます。
私の焙煎は、上からの水道の流入量だけで調整します。
「ダンパー」を使うということは、水道を同じように調整しながら、下側の「排出栓」の開けたり閉じたりしながら流出しながら調整していると同じです。結果は、安定しません。(半分開いたり、1分間全開なんて得意げにしているわけです。) 大笑いですね。
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「3」 これで、美味しくなったり、渋みが出たり、酸味が・・、甘みが出たり・・・・します。
「わースゴイ、味が全然ちがうわっ」と素人は思います。
何故なら、焙煎豆の見た目(色目)は同じだからです。
前回も同じことを書いてますが、ここが手品のタネです。
色目は同じですが、焙煎度合は全く違うわけです。
(当然ながら味は大きく違う)
しかし、ダンパーが「無くても」同じように出来ます。
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「4」 ガテマラ SHBを使っての講座・・・
色目で判断する限り焙煎は永遠に判らない・・・・何故なら色は幅だからです。
このSHBなら2ハゼのずっと前から、2ハゼ入って30秒後も同じ色で推移します。(もちろん、火力にも拠りますが) だから、この範囲の味はバラエティーに富んでいます。
まるで「ダンパー」が味を変えたように錯覚しますが、「ダンパー無し」でも同じことは簡単に出来ます。
もう、お分かりですね、焙煎は色(幅)判断するという前提そのものが実は「?」なのです。
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「5」 私共の焙煎の基準は「点」です。それが焙煎講座の眼目です。
「点」を目指して焙煎するだけが珈琲焙煎ですから、技術や勘は必要ありません。
だから、よく言われるように、中煎りでは「フルーティーな酸味が云々」、2ハゼ以後では「ナッツを連想させる香り云々」「コクが・・」なんて当り前のことを尤もらしく語ることも、同じ豆を焙煎度合いを変えてお客様の選択に委ねることもほとんどありません。
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「6」 どんな豆も同じ温度で1ハゼ、2ハゼが来るのなら「点」も同じ温度です。そして、その点を任意で動かせる範囲が違うのです。
丁度、5両編成の電車を運転していて、ある駅はプラットフォームが15両分ある長い駅、5両分しかないギリギリの駅のような違いと書けば判りやすいと思います。
5両編成で5両分なら余裕がありません、「ブルマン」はそんな感じの豆で、ピンポイントで煎ります。マンデリンSGなら何処で停めてもOK。
こういうことも実は、色で煎り分けている限りは、出来ないのです。基準が無いからです。
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「7」 結局、近所の同業者は肝心のことは教えてくれないのです。
これは本当ですね。自分が苦労したものを「はい、どうぞ」と渡したくはありませんが、それ以前に、言ってもわからないと思いもあります。特に、あちこちで聞いている人は、支離滅裂なことを平気で言ってくるので辟易します。
聞く準備も出来てない人ですから、根本的に相手にされません。
聞く前に自分で全部試した方だけが判るのです。