ゆんのひとり言

~お酒とお芝居と歌とスイーツをこよなく愛するゆんの日記~

「ドライブ・マイ・カー」@TOHOシネマズ日比谷

2022-02-26 13:00:00 | 観劇記&鑑賞記

今年1本目の映画を観てきました。
カンヌに続いてアカデミー賞ノミネートのおかげで
再上映してくれる映画館が増えて,ちょうど良かったです。

原作は村上春樹の短編集「女のいない男たち」に所収されている
同名の作品ですが,とても短い作品なので,
予約する時,上映時間を見て目を疑いました。
179分。
179分?!
3時間です。
あの短い作品から,179分の作品が生まれるのか?!と。

お芝居なら,確実に途中休憩が入る長さです。
これは気合入れて行かないとだな…ということで,
TOHOシネマズにある,プレミアムボックスシートを取っちゃいました。
通常料金+1000円です。
3時間も座るなら,快適な方がいいでしょ,と。
結果として,半分正解,半分失敗でした。
理由は後述します。

村上春樹の同名の作品をモチーフにしていますが,
「シェエラザード」「木野」のエピソードも盛り込まれています。
冒頭の,音が訥々と物語を語る場面で,あ,これ,別のやつで読んだぞ?と。
原作はとても淡々とした作品なので,
膨らませないと,成り立たないですもんね。

ストーリーは色んな所で紹介されているので割愛しますが,
これは「鎮魂と再生」の物語だな,と感じました。
妻の秘密を知ってしまった痛み,
秘密を知っていることを隠したまま妻を亡くした痛み,
妻を亡くした原因にもなってしまっていることの痛み。
親の愛を知らずに育った痛み。
震災で自分は助かり,母を救えなかった痛み。
母を亡くしてむしろホッとしてしまっている心の痛み。
痛みを抱える者同士が,淡々と交流を重ね,
お互いに赦しを得て,再生していく姿が描かれていました。

原作と映画とで,色々変わっている設定がありました。
一番大きいのは場所ですかね。
原作では家福(西島英俊)が事故を起こして免停になったため,
(飲酒もしていたけど,そこはもみ消すという設定)
ドライバーを雇うことにしますが,
映画では広島での演劇祭に演出家として参加する間,
万が一に備えてドライバーのみさき(三浦透子)を付けさせてもらう,という
主催者の意向でドライバーに運転を委ねることになります。
これにより,「飲酒運転」という法律違反を排除できるし,
瀬戸大橋や瀬戸内海といった,広島の風景を楽しむことができます。
工場に雪原まで登場して,視覚的に嫌らしくなく
エンタメの要素が盛り込まれていると感じました。
本当は韓国で撮影する予定だったようですが,
コロナにより変更を余儀なくされたそうです。

劇中劇の出演者が中国や韓国など,9か国語に韓国手話まで飛び交う
多様な顔ぶれになっているのも面白いです。
それぞれの母国語で,舞台上に設置したスクリーンに
字幕を投影するという作品になっていて,
これは実際に観てみたいですね~。

また,原作ではみさきの容姿についての言及が
何度が出てきて,みさき自身も容姿に自信が無いと言う場面がありますが,
映画ではそういった描写は一切排除されていました。
海外では容姿についてどうこう言うのはタブーとされるようですし,
そこまで見越して脚本を書いたのかな,と。
みさきのドライバーとしての矜持も,映画の方が強く感じられました。
原作では,いきなり家福の車の中でタバコを吸うんですよね。
人の車の中で,所有者の許可なしにタバコ吸うのはダメでしょ。。

家福の妻・音(霧島れいか)の情事の相手・高槻が,
中年男性から若い男性(岡田将生)になっているおかげで,
視覚的にも物語的にも良いアクセントになっていましたね。
多分,興業的にも…。

細かいところで,家福の緑内障になった目が,
右目から左目に変更されていたり,
みさきの年齢が24歳から23歳に変更されていたのも気になります。
きっと,理由があると思うんですよねー。
目は,利き目とかそういうアレかな,とか思いますが,
みさきの年齢の1歳の違いは,何だろう…。

音楽も,耳に心地よいだけではないものがあったりして,
映画の世界に合っていたように思いました。

劇中劇で使用される「ワーニャ伯父さん」が,
驚くほどストーリーとうまくリンクしていたのが
また印象的でした。
劇中劇でソーニャを演じるイ・ユナ(パク・ユリム)は
ワーニャの肩越しに,手話で語りかけるのですが,
パクさんの透明感のある優しい表情と,手の動き,
そして,その手の動きを追ってワーニャの視線が前を,上を向く姿に
涙が出てきました。
「赦し」を感じた場面です。
セリフだと,どうしても声色,言い回し,強弱,間合いなど
色んな情報が入ってきますが,
手話だと,手の動きしかないので,
各人の脳内でセリフが再生されることになります。
それがとても効果的な場面だったと思います。

ワーニャ伯父さんを読みたくなりました。
(チェーホフは苦手なのですが…)

さて,+1000円のプレミアボックスシートですが,
座席の左側に手荷物を置くスペースがあり,
また,両側を遮られているので,隣の人を気にする必要が
ほぼありません。
鼻かゆいなとか,肩凝ったなとか,水飲みたいけど今はダメかな…とか
全く気にしなくて良いし,皮張りのシートは座り心地良いし,
手すりは両方好きなように使えるし,快適!
そのおかげもあってか,3時間を全く長く感じませんでした。
これが,半分正解の理由。

半分失敗の理由は,目の前が通路だったこと。
上映時間179分のせいか,途中退席する人の数がハンパなかったんです!
そのたびに,目の前を人が通り過ぎるわけです…。
出てった人が戻ってくるから,1人に2回遮られるんですよね。。。
中には暗い中,キャリーカートを引きながら,
えっちらおっちら出ていくお年寄りいて,足元大丈夫?と
ドキドキしちゃいました。
(そしてそのお年寄りは戻ってこなかった…)
上映時間,確認して,備えておくれよ…っていうのは無理なのか…。

TOHOシネマズ日比谷は,プレミアムボックスシートの前に,
プレミアラグジュアリーシートなる座席があり,
そちらは,+1500円。
その席だと,後ろが通路になるので,視界を遮られることはありません。
今作に関しては,ラグジュアリーシートが正解だったな…と思いました。

気軽に「もう一度行こう」とまでは思えませんが,
観て良かったな,と素直に思える作品でした。

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