(英題:Take Care of Your Scarf, Tatiana)94年作品。フィンランドの異才アキ・カウリスマキ監督の手による映画である。上映時間が62分というのも驚きだが、物語のエッセンスだけを抽出した作劇で見事な充実感がある。仕立て屋である母親の手伝いをして暮らすしがない中年男ヴァル(マト・ヴァルトネン)と冴えない中年の修理工レイノ(マッティ・ペロンパー)の二人旅を描くロード・ムービー。
車を運転するヴァルとウォッカをかぶ飲みするレイノとの間にはほとんどセリフはない。途中で立ち寄ったスナックで、二人はロシア女クラウディアとエストニア人のタチアナ(カティ・オウティネン)と知り合い、4人で旅を続ける。男女2人ずつの旅だから何かあると思ったら見事に何もない(言葉があまり通じないこともあるが)。ホテルに男女ペアに別れて部屋に泊まっても、観客が期待するような展開にはならない。4人とも見事に寡黙。
しかし、ラスト近くの思いがけない筋書きが、まったく不自然に思われないのは、登場人物の断片的な行動だけを映して、その内面までもすべて描き出してしまう演出力の勝利である。
特にシークエンスの繋ぎ方が絶妙で、大胆に省略しているにもかかわらず、観ている側には画面に出てこない展開が手に取るようにわかるのだ。見た目はハードボイルド風だが、観終わって何とも言えない情感が漂ってくるのも、心から作者が登場人物を愛している証拠だろう。
モノクロの画面で舞台は60年代に設定してある。口数少ない男たちに代わって、当時のロックが即物的に鳴り響く。映像的にも申し分はない。あらゆる意味でハリウッドの対極にある映画。でも寡黙さの中にある心理描写のダイナミックさは他の追随を許さない。ストイックで、愛すべき映画だ。
車を運転するヴァルとウォッカをかぶ飲みするレイノとの間にはほとんどセリフはない。途中で立ち寄ったスナックで、二人はロシア女クラウディアとエストニア人のタチアナ(カティ・オウティネン)と知り合い、4人で旅を続ける。男女2人ずつの旅だから何かあると思ったら見事に何もない(言葉があまり通じないこともあるが)。ホテルに男女ペアに別れて部屋に泊まっても、観客が期待するような展開にはならない。4人とも見事に寡黙。
しかし、ラスト近くの思いがけない筋書きが、まったく不自然に思われないのは、登場人物の断片的な行動だけを映して、その内面までもすべて描き出してしまう演出力の勝利である。
特にシークエンスの繋ぎ方が絶妙で、大胆に省略しているにもかかわらず、観ている側には画面に出てこない展開が手に取るようにわかるのだ。見た目はハードボイルド風だが、観終わって何とも言えない情感が漂ってくるのも、心から作者が登場人物を愛している証拠だろう。
モノクロの画面で舞台は60年代に設定してある。口数少ない男たちに代わって、当時のロックが即物的に鳴り響く。映像的にも申し分はない。あらゆる意味でハリウッドの対極にある映画。でも寡黙さの中にある心理描写のダイナミックさは他の追随を許さない。ストイックで、愛すべき映画だ。
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