元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レオン」

2008-11-05 06:27:40 | 映画の感想(ら行)

 (原題:Leon The Proffesioal)94年作品。リュック・ベッソン監督が初めて手掛けたアメリカ映画で、同監督の作品の中で最もよく知られた一本だ。イタリア生まれの凄腕の殺し屋レオン(ジャン・レノ)のもとに、悪徳麻薬捜査官(ゲーリー・オールドマン)に家族を殺された12歳のマチルダ(ナタリー・ポートマン)が助けを求めて逃げ込んでくる。復讐を誓う少女をかくまううちに、二人の間には恋愛感情が芽生えてくるが、悪の手は確実に彼らに迫ってくる。

 ベッソン作品にしては、驚くほど平易なドラマツルギーだ。無骨で孤独な大人が、心に傷を負った子供と知り合い、次第に心を開き合うという設定の映画は数え切れないぐらいある。犯罪ドラマに限っても、「キリング・タイム」「EMMA」「フライト・オブ・ジ・イノセント」など枚挙にいとまがない。さらに傑作「グロリア」がある。あれは中年女と男の子の話だったが、監督ジョン・カサベテスの名人芸的な演出で観客をのめり込ませた。

 「レオン」は最初の10分間だけでストーリーがわかってしまう。「ニキータ」みたいな設定のユニークさや「グレート・ブルー」の神秘的な深さはない。それだけ安心して観ていられるが、意外性がない分不満でもある。ただ印象的だったのが、ベッソンが見せるアメリカ映画へのストレートなオマージュだ。

 レオンが楽しそうにジーン・ケリーのミュージカル映画を観る場面。マチルダがモンローやチャップリンなどの扮装でおどけるシーン。アメリカ映画を撮ることがうれしくてたまらない様子がうかがえる。そういえば単純明快なストーリーはハリウッドのそれだし、オールドマンの(いくぶんステレオタイプの)神経症的悪役もアメリカ映画ではよく見かける。エリック・セラの音楽は今回思いっきりウェットで通俗的だが、作品のカラーと合っている。

 ジャン・レノはいつもながらの好演だが、この頃のポートマンの存在感はかなりのものだ。利発な美少女で何とも言えない色気がある。ニューヨーク生まれながら、実にヨーロッパくさい(彼女が身につける衣装デザインも特筆もの)。アクション・シーンのキレはもちろん、ティエリー・アルボガストのカメラも清涼な雰囲気を漂わせている。屋外のシーンはニューヨークで撮っているが、室内の場面はフランスで収録。舞台もフランスにしたらかなり先鋭的な作品になったかもしれない。でも、これはこれで万人受けする良質の娯楽作だと思う。
コメント
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