(英題:Love, First )市内某映画館で開催されている“韓流シネマ・フェスティバル2008 ラブ&ヒューマン”なる特集上映の中の一本。はっきり言って全然面白くない。ソウルを舞台に、5組の男女の恋愛模様を描く。とはいってもオムニバス映画ではなく、ひとつのそれぞれのカップルに互いに小さな接点を持たせたまま、ひとつのストーリーの中でエピソードが進んでいく形式だ。ところが、どの話もワザとらしくて臭くて見ていられない。
ファーストシーンの歯が浮くようなモノローグから始まって、テレビの韓流ドラマみたいな予定調和のメロドラマがダラダラと続くのみ。そして大団円が“皆既日食の日、愛の奇蹟は起きる!”みたいなノリなのだから、観賞後はかなりの脱力感に見舞われてしまった。監督は「青春漫画 ~僕らの恋愛シナリオ~」のイ・ハンなのだが、あの映画のような真摯な姿勢は微塵も窺えない。
その理由を私なりに考えてみると、これは弱体気味の俳優達に尽きるのではないだろうか。たとえ話が凡庸でもキャストに存在感があれば何とか乗り切れてしまうのだが、本作はヒド過ぎる。感情移入できるキャラクターどころか、ルックスや演技の面でも特筆すべき面子が誰一人登場しないのだ。テレビドラマの通行人みたいな連中が、勝手によろめき話を披露しているだけ。一体いつから韓国映画界は人材が払底してしまったのだろうか。
考えてみれば韓国の俳優(特に若手)でサマになっているのは、男優では“四天王”クラスとあと数人、女優でもその程度。特に20歳代後半の、以前からよく映画やドラマに出ている連中より下の世代は全く目立っていない。スターの雰囲気を漂わせた俳優陣で内容が垢抜けないシャシンも何とか場を保たせていた韓国映画にとって、非常にヤバい状況なのではないだろうか。
そういえばこのイベント、数年前までは劇場には入れないほど客が溢れるほどの大盛況だったのが、今回は半分ちょっとの入りだ。ブームは完全に終わり、わずかに残った韓流スターのファンは映画館ではなくビデオか有料放送で満足しているというのが実情だろう。まあ、ひと頃の猫も杓子も韓国映画を輸入していた状況にはピリオドが打たれ、ミニシアターにはそれに相応しい作品ばかりが公開されるようになって、マトモな映画ファンにとっては安堵できる状況になったのは間違いないのだが・・・・(^^;)。